FXに興味を持ち始めたり、始めたばかりのタイミングで「ドルストレート」「クロス円」というフレーズを耳にする機会が増えてくるでしょう。
ドルストレート、クロス円それぞれの違いと特徴について解説します。
ドルストレートとクロス円
まず、ドルストレートについて説明します。
FXでは、米ドルが直接絡んだ通貨ペアをドルストレートといいます。
(ストレート通貨とも呼ばれています。)
米ドル/円やユーロ/米ドルが、ドルストレートの代表的な通貨ペアですね。
タイプ | 通貨ペア |
---|---|
ドルストレート (ストレート通貨) | 【米ドルが含まれる通貨ペア】 米ドル/円、ユーロ/米ドル、ポンド/米ドルなど |
クロス通貨 | 【米ドルが含まれない通貨ペア】 ユーロ/円、ユーロ/ポンドなど ドルストレート以外の通貨ペア全て |
クロス円 | 【円が含まれる通貨ペア】 ユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円、NZドル/円など |
例えば、円が絡むから円ストレート、などとは呼びません。
米ドルは基軸通貨ですので、基軸通貨の米ドルを介した通貨ペアのみがドルストレートとなります。
ドルストレートにおけるレートの見方は、いたってシンプルです。
単純に、米ドル/円なら1米ドル=110円、ユーロ/米ドルなら1ユーロ=1.2米ドルといった風に、米ドルと二国間のレートを見るだけです。
米ドルを介さない通貨ペア、つまりユーロ/ポンドやユーロ/円などは、総じてクロス通貨と呼ばれます。
そしてクロス通貨のうち「米ドルを含まず、円を含む通貨ペア」、つまりユーロ/円やポンド/円のことをクロス円といいます。
クロス通貨やクロス円は、2つの通貨ペアを米ドルを介してクロスさせていることから、「合成通貨ペア」とも呼ばれています。
このほかユーロクロス、ポンドクロスといった分け方もあります。
ユーロクロスを例にすれば、ユーロが含まれていて、米ドルが含まれていない通貨ペアのことです。
具体的にはユーロ/円、ユーロ/ポンド、ユーロ/豪ドル、ユーロ/NZドル、ユーロ/スイスフラン、ユーロ/カナダドルなどが該当します。
ドルストレートのメリット・デメリット
先ほど述べたように、ドルストレートは単純に2つの通貨の動きだけに注目すれば大丈夫です。
クロス円でユーロ/円を例にすれば、米ドルの値動きも見ていかなければいけない難解さが、ドルストレートにはないのです。
2通貨の強さ・弱さだけの判断だけで済むことが、ドルストレートのメリットです。
ですが実際には、為替は二国間だけの問題ではなく、他の通貨の影響を受けて変動しますので、2通貨だけに注目してトレードすればOKという訳でもありません。
直接影響を及ぼすのが2つの通貨、というのがドルストレートなのです。
米ドル/円以外のドルストレートは円を介さないことから、私たち日本人には親しみにくいイメージがありますが、世界的にはドルストレートの通貨ペアが為替の世界の中心です。
つまりユーロ/米ドルをはじめ、通貨ペアによっては安定した流動性がドルストレートのメリットでもあります。
クロス円のメリット・デメリット
クロス/円のメリットといえば、やはり円が介されていることの親しみやすさが挙げられます。
また円は低金利通貨ですから、高金利通貨との組み合わせはスワップポイントが高い点も魅力です。
FX業者もクロス円のスプレッドには力を入れていますので、低スプレッドであることもメリットです。
デメリットとしては、ユーロ/円やポンド/円であっても米ドルを介していることで、単純に2つの通貨の値動きだけではなく、米ドルの値動きも見ていく必要があります。
ユーロ/円を例にして見てみましょう。
ユーロ/円といっても、単純にユーロと円だけの取引ではありません。
こちらのイメージにあるように、ユーロの売買をするには米ドルを通さなければいけない仕組みです。
つまり2通貨に注目すればよいドルストレートに対し、クロス円は3通貨の値動きを見ていかなければいけません。
またドルストレートに比べると、通貨ペアによっては取引量の少なさから「激しい値動き」になりやすいこともクロス円のデメリットです。
クロス円、ドルストレートのpipsの見方
それではクロス円とドルストレート、それぞれで取引したとき、pipsの違いに悩む方は少なくないかもしれません。
多くのFX業者の取引画面では、クロス円は「小数点は下3桁」、ドルストレートは「小数点は下5桁」となっています。
難しいことは考えずに、1万通貨で取引する場合の例をご覧ください。
赤字の最小単位に注目してください。
クロス円は50銭の「0の位置」が1pipsの位になります。
そして0.1pips変動すれば、10円の増減となります。
ドルストレートも同じく「0の位置」が1pipsの位になります。
0.1pips変動すれば、10円(※1USD=100円のとき)の増減となります。
このときドルストレートでpipsの利益を計算するには、1.1pipsが利益ならば、これに米ドル/円レートをかけることで、利益を算出できます。
クロス円のレートの算出方法
ドルストレートと異なり、クロス円はレートの算出が異なってきます。
ユーロ/円やポンド/円のように、米ドル以外の取引をする場合であっても、基軸通貨となる米ドルを介さなければいけない仕組みとなっているのです。
例えばユーロ円の取引をする場合、円で米ドルを買ってから、米ドルでユーロを買うという流れとなります。
ただFXでは、このような売買をするのは現実的ではありませんよね。
クロス円のレートは、以下の計算方法でかんたんに求めることができます。
EUR/USD × USD/JPY = EUR/JPY
(1ユーロ=1.2米ドル) × (1米ドル=100円) とすれば、 1ユーロ = 120円 ということになります。
ユーロ/円の取引なら、単純にユーロの値動きだけを追えばよいと思っていた方もいるかもしれません。
実際には、2国間の動向だけではなく米ドルの値動きも見ていく必要がある、ということになります。
ユーロ/円で買いポジションを保有するならば、実はユーロ/米ドルのショート+米ドル/円のロング、この2つの合成通貨ペアとなるんですね。
ドルストレートを中心に考える
何か為替変動に関わる大きな出来事があったとき、よくテレビやニュースでは「円が全面安」「クロス円が急落」などと伝えられる場面もあります。
円が全面安ならすべての通貨に対して下落していることが分かりますが、クロス円の場合はそうともいきません。
クロス円が急落の場合には、
- 米ドル/円も同時に下落しているのか?
- 米ドル/円以外が下がっているか?
がすぐ分かる方は、そのときの本質をしっかり理解しているということなのです。
日本で生活して、普段日本円を使っていると、なかなか米ドル中心で考えることは難しいかもしれません。
しかしFXにおいてドル中心で考えられるようになれば、どの通貨がチャンスであるかを瞬時に判断できるようになり、有利にトレードを進められるようになります。
FXのときだけでもアメリカ人になったつもりの目線で、ドルストレートを中心に相場を見るとクロス円の動きがより掴みやすくなります。
つまり米ドルの強弱を基準に、ユーロ、円が相対的に強いか弱いかをチェックしていくのがおすすめです。
クロス円はドルストレートよりもレート変動が激しい
FXではユーロ/米ドルの取引量が世界でもっとも多く、次いで米ドル/円もかなりの取引量であることから、この2通貨ペアは落ち着いた値動きをする傾向にあります。
これに次いで、取引量が多い通貨ペアのほとんどをドルストレートが占めています。
反して米ドル/円以外のクロス円は、ドルストレートの影響を常に受けてしまうことで、値動きが激しくなりがちです。
また米ドル/円以外のクロス円は、ドルストレートに比べると取引量が少ないことも影響します。
クロス円のうち、ユーロ/円を例にします。
ユーロ/円は、ユーロ/米ドルと米ドル/円の合成通貨ペアであることはもうお分かりですよね。
例えば、「ユーロ/米ドル」と「米ドル/円」がどちらも上昇していれば、以下の流れとなります。
- ユーロに対して、米ドルが買われている。
- 同時に米ドルに対して、円が買われている。
力関係としては、「ユーロ」 < 「米ドル」 < 「円」となりますね。
しかし米ドル自体の価値が変わらなければ、ユーロが大きく売られて円が買われている状況とも判断できるでしょう。
そのためユーロ/円の取引といっても、米ドル/円、ユーロ/米ドル両方の力が働くため、これらの通貨ペア以上に大きく上昇したり下落しやすい特徴があるのです。
ユーロ/米ドルと米ドル/円の変動によって、ユーロ/円はどんな値動きになるのか、詳しくは以下の記事もご覧ください。
「ドルストレート」と「クロス円」の仕組み【まとめ】
ドルストレートとクロス円の仕組みが理解できましたでしょうか?
これからFXにチャレンジするなら、ドルストレートであり値動きが安定した「米ドル/円」から始めるのがおすすめです。
取引に慣れてきたら、さまざまな通貨ペアに目を向けることで、収益チャンスもより一層大きく広がります。
まずは米ドル/円で最初のステップを進んでみてはいかがでしょうか。
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