将来のアメリカの政策金利は、マーケットではどのように予想されているかを知れたら、有利にトレードを進められると思いませんか?
数ある経済指標のなかでも、もっとも影響力が大きい経済指標といえば、FOMC政策金利発表です。
アメリカ一国の政策金利が動けば、米ドル/円などのドルストレートはもちろん、ユーロ/ポンドなどの非ドルストレート通貨ペアから、株価指数、金、原油などほぼ全てのマーケットに影響を与えるといっても過言ではありません。
FXでの分析というとテクニカル分析を駆使した分析を用いる方は多いと思いますが、中長期のトレンドを見ていく上で、政策金利の推移に注目することは極めて重要です。
またFOMC政策金利発表のタイミングでは数円以上の値動きもすることから、短期トレードとしても収益チャンスを見込むことが可能です。
単純に、利上げなら米ドル買い、利下げなら米ドル売りと判断することができますからね。
このFOMC政策金利で事前に予想を知ることができる、CMEグループのFedWatchツール(フェド・ウォッチ・ツール)がとても便利なので、今回ご紹介させていただきます。
CMEグループとは
先にCMEグループについて説明しますが、このCMEはシカゴ・マーカンタイル取引所(Chicago Mercantile Exchange)の略称で、アメリカのシカゴを本拠として北米最大のデリバティブ(金融派生商品)取引所を運営する会社です。
金利、株価指数、外国為替(FX)、農作物、エネルギー、貴金属などを取り扱っており、先物、オプション、店頭取引が提供されています。
CMEグループは4つの主要な取引所で構成されています。
- CMEグループ
- CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)
- CBOT(シカゴ商品取引所)
- NYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)
- COMEX(ニューヨーク商品取引所)
このうち先物取引所のCMEでは、金利を指数とする金利先物取引が行われており、金利を取り扱う市場としては世界有数の取引所となっています。
金利先物は日本やイギリスでも取り扱われています。
しかしCMEグループはアメリカの会社ですから、FRB(FOMC)がどのように金融政策を進めていくのか、もっとも精通している情報源といえるのですね。
なおFRB、FOMCについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
合わせてチェックして、より深くFOMC政策金利を学んでみてください。
FedWatchツールとは
そんなCMEが公開している無料ツールが「FedWatch Tool」で、アメリカの金利先物市場ではどのように予想されているのか、かんたんに確認することができます。
※CMEでは日本語のページも用意していますが、残念ながら日本語版でもFedWatch Tool自体は英語ですので、どちらで閲覧しても違いはありません。
それでは、PC向けの画面で、英語版を例に見方を解説していきます。
(※スマートフォンでアクセスしても、最適化された画面で閲覧が可能です。)
上記URLにアクセスすると、以下のような画面が表示されます。
こちらにある日付は、次回のFOMC政策金利発表までのカウントダウンとなっています。
そのすぐ下にあるコンテンツに注目してください。
こちらにあるのが、FedWatchツールとなっています。
FedWatchツールの見方
FedWatchツールの各部の名称を日本語訳にすると、以下です。
重要な部分を赤文字で記載しています。
デフォルトの画面がTarget Rate(目標レート)のCurrent(現在)です。
FOMC政策金利の市場織り込み度(=予想)を知るには、基本的にはこの1画面だけで完結します。
上部にある数字のタブが、FOMC政策金利発表の予定日です。
一番左側が直近の予定となっており、「16 322」なら2022年3月16日を表します。
上部右側にPROBABILITIES(確率)とありますが、これは利下げ、変化なし、利上げの確率を示します。
こちらの例でいうと、FRBはインフレ(物価上昇)を抑えるために、2022年1月26日のFOMCで次回(2022年3月22日)の利上げを示唆しています。
これにより利上げが確実視されていることで、HIKE(利上げ)が100%となっています。
政策金利(FF金利, フェデラル・ファンド金利)は、25ベーシスポイントという金利の表示単位で表されます。
そして1ベーシスポイント(BPS)= 0.01%となります。
中央付近のCurrent Target Rate of 0-25が記事公開時の政策金利ですので、「0.00〜0.25%」ということになります。
中央の棒グラフは当日の織り込み度を示します。
先ほどの利上げ予想となる100%のうち、0.25〜0.50%に利上げする予想が「85.7%」、0.50〜0.75%に利上げする予想が「14.3%」という意味になります。
下部にある、TARGET RATE(BPS)とPROBABILITY(確率)と記載がある表では、当日〜1ヶ月前にかけた織り込み度の変化をチェックすることができます。
FedWatchツールでは、予想確率が70〜80%を超えてくると、政策金利(FFレート)を変更する可能性が高いと判断されています。
こちらの例では、予想確率は85.7%となっており、70%を大幅に上回っていることから、ほぼ利上げが既定路線といえることが分かります。
FedWatchツールの予想と発表の差に注目!
FOMC政策金利発表の際に、基本的な値動きとしては、
- 利上げ→米ドル買い(米ドル/円は上昇)
- 利下げ→米ドル売り(米ドル/円は下落)
となります。
今回の例では利上げが100%ということで、すでにマーケットでは織り込み済みであるということです。
利上げは米ドルの買い要因であるものの、金利上昇が確実視されている場面では、サプライズ的な要素とはなりにくいです。
つまり、織り込み度合いとサプライズによっては、利上げのケースでは以下のような値動きが考えられます。
- 「利上げ織り込み済み」+「利上げを実施」= 米ドルの買い要因(穏やかに上昇)
- 「利上げ織り込み済み」+「金利変化なし」= サプライズで米ドルの大きな売り要因
- 「利上げの予想がない」+「利上げを実施」= サプライズで米ドルの大きな買い要因
- 「利上げの予想がない」+「金利変化なし」= 売買要因にはなりにくいが、FOMC会合後の「FOMC声明」に注目
FOMC政策金利も数ある経済指標と同じように、事前予想と発表値にギャップ(サプライズ)があるほど、マーケットは反応して為替は大きく動くのです。
たとえ政策金利が上がったとしても、事前予想通りなら為替の値動きが限定的であったり、逆に動くケースも考えられます。
FOMC政策金利発表は、中長期トレードならトレンドの方向性を見極めるのに欠かせませんが、指標発表のタイミングを狙う短期トレードなら「予想値と発表値の差」に注目するようにしてください。
その他のFedWatchツールの機能
左にあるメニューからは、別のFedWatchツールを使うこともできます。
Compare
Compare(比較)では現在、1日前、1週間前、1ヶ月前の予想をグラフで比較できます。
Probabilities
Probabilities(確率)では、FF金利先物の価格や、政策金利の予想・確率を見ることができます。
30日FF金利先物とは何かというと、FRBの誘導目標であるFF金利を参照するデリバティブ商品(金融派生商品)のことで、CMEのシカゴ商品取引所に上場されています。
※先物取引とは、ある商品(原資産)を、将来の決められた日(期日)に、現時点で決められた価格で売買することを約束する取引です。
つまりFF金利先物は、米政策金利の将来の水準を想定して取引される金融商品となんですね。
FF金利先物では、各限月における日々のFF実効金利を30日ベースで平均したものが原資産となり、期近(当月)から36歴月(3年先)まで、毎月が限月として取引されています。
例えば2022年1月限月の価格は99.9213ですので、FF実行金利は、
100 − 99.9213 = 0.0787%となります。
このFF金利先物の価格には政策金利の変更が織り込まれていることから、この数値をもとに、政策金利変更の確率が算出されているという仕組みです。
このほかProbabilitiesでは、今後の政策金利の予想や、確率の推移を見ることもできます。
Historical
Historical(過去の予想)では、過去の織り込み度の移り変わりを見ることができます。
織り込み度に変化が見られてきたら、米ドルを中心に為替が大きく動いている可能性の発見にも役立ちます。
上部中央にあるボタンから、積み上げ面グラフに切り替えもできます。
Downloads
Downloadsでは、確率の履歴をExcel形式でダウンロードできます。
Prior Hikes
Prior Hikes(利上げ確率)では、金利先物市場が示唆する利上げ確率を見れます。
Chart
Dot PlotのChart(チャート)では、FOMC各メンバーの予想を見れます。
ドットプロットを分かりやすくいうと、金利予測の分布図です。
水色のドットがFOMCメンバー全体の予想から割り出された中央値ですので、これを大まかな予想と捉えておくイメージですね。
Table
Table(表)では、FOMC参加者によるFF金利の長期金利を表形式で見ることができます。
ドットプロットよりも、こちらの方が見やすいかもしれませんね。
FedWatchツールの見方・使い方【まとめ】
ここまでで、FedWatchツールの使い方をご紹介させていただきました。
最初の画面の「Current」だけでも充分といえますが、他の機能使ってみたい方はお試ししてみてください。
無料で使えますので、ぜひ米ドル相場の先行き分析に使ってみてはいかがでしょうか。
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