移動平均線の分析手法というと、ゴールデンクロス/デッドクロスで知られるグランビルの法則や、3本の位置関係を見るパーフェクトオーダーがメジャーです。
またディナポリ・チャートでも使われるほか、GMMAという12本の移動平均線で分析を行うやり方もあります。
このほかに、1時間足に日足の移動平均線を表示させるような、マルチタイムフレーム分析(MTFA=Multiple Time Frame Analysis=MTF分析)という手法もあります。
そもそもMTF分析とは、どのような考え方でどういった判断に有効的なのでしょうか。
こちらのページではMTF分析の基本から、チャートでの具体的な使い方を詳しくご紹介します。
マルチタイムフレーム分析とは
FXのチャート分析では、マーケット動向を見て戦略を立てていくことが重要となってきます。
ひとえにトレンド相場といっても、短期、中期、長期と視点を変えると、それぞれの時間軸ごとに異なるトレンドが存在します。
それによって、短期では買いのチャンスに見えても、長期では売りのシグナルが発生するように、相反するサインが出現することもしばしば起こります。
FXに慣れていない方ほど、単一の時間軸だけでトレードしてしまう傾向があり、強力なトレンドの変化を捉えることができず、結果として機会損失につながってしまいます。
それだけではありません。
長期の時間軸を無視して短期の時間軸だけでトレードしてしまうと、トレンドの明確な節目となるサポート/レジスタンスを見失いがちです。
そうすると、適切なエントリー(新規注文)、イグジット(決済注文)のタイミングを逃すミスを犯してしまうのです。
しかしMTF分析をすることによって、例えば4時間足のチャートで移動平均線を見ていても、日足のシグナルを元に売買判断に活用することが可能となります。
MTF分析の基本的な考え方とメリット
『木を見て森を見ず』ということわざがありますよね。
これは目の前の木を見ることにこだわりすぎると、全体では大きな(小さな)森だったことを見失ってしまうことを表しています。
MTF分析の基本的な考え方も一緒で、「長期の時間軸で相場の方向性や転換を見ながら、短期の時間足でタイミングを判断して売買ポイント探っていく」というものです。
相場は長期足でトレンドの方向性が明確であったり、長期足で反発が明確であるほど、サポート/レジスタンスに働く力も強くなります。
月足 → 週足 → 日足 → 4時間足 → 1時間足 → 30分足 → 15分足 → 5分足 → 1分足
上記は極端な例ですが、分析するときはこのように、上位足種から下位足種へと順番にチャートを見て動向を判断していきます。
チャートで単一の短期足だけでは、売買ポイントを見落としがちです。
単一の短期足だけでは判別が難しいケースであっても、MTF分析をすることで、長期足のサポート/レジスタンスによる明確な売買ポイントを見つけ出すことができます。
MTF分析のメリット
MTF分析をすることで、以下のメリットがあります。
MTF分析「3つ」のメリット
- 短期足のチャートであっても、長期足による方向性や転換を判断できる
- 単一の短期足では判断できない可能性がある、強力な転換となりうる長期足のサポート/レジスタンスを売買に活用できる
- 長期足の動きを見ることで、短期チャートであっても今後の具体的な売買ポイント(戻り/押し目、反転など)の到来をチェックでき、いったん待機してトレードする戦略ができる
もちろんMTF分析による戦略がすべて上手くいくわけではありませんが、MTF分析をすることで勝率を高めることに期待ができます。
短期足で売買シグナルが発生していても、長期足で異なる売買シグナルが発生していれば、一歩立ち止まって反対の方向でエントリーする戦略に役立つのです。
移動平均線を使ったMTF分析
MTF分析でもっともオーソドックスなテクニカル指標が移動平均線です。
まずは2時間足に、通常の移動平均線として5SMA、20SMA、90SMAを表示させた例です。
これにマルチタイムフレームの移動平均線として「4時間足の20SMA」「日足の90SMA」も表示させた例がこちらです。
2本のMTF移動平均線はカクカクした動きが特徴的ですね。
チャートの矢印の期間に注目してください。
日足の90SMAが下落、4時間足の20SMAは下落から上昇に転換した動きとなっており、下降トレンド中において直近高値を試す上昇が見られていた局面です。
日足の90SMAを上抜けばトレンド転換の可能性を示唆していましたが、キレイにレジスタンスとなってレートが反発している様子がわかりますね。
また直近の4時間足の20SMAを見ると、サポートとして効いていることも確認ができます。
MT4でMTFの使い方
メタトレーダー4(MT4)で使うには、まず画面下部のターミナルにあるライブラリを開いてください。
※ターミナルが見当たらない方は、上部タブの「表示」→「ターミナル」で表示ができます。
そうすると色々なインジケーターが表示されますので、まずは名前順で表示させます。
「Multi TimeFrame Moving Average」を探して、チャートにドラッグしてください。
いくつか種類がありますが、お好みでどれを試しても大丈夫です。
ドラッグしたら、いったんMT4を閉じて再び起動してください。
ナビゲーター内に「Downloads」の項目が追加されますので、「mtf_ma」などのインジケーターをチャートにドラッグするか、ダブルクリックでチャートに追加ができます。
※MT4を再起動しないと、Downloadsへの追加が反映されませんので注意してください。
なお移動平均線の各種パラメーターは以下で設定ができます。
- Moving Average Timeframe:足種を指定(1時間足、4時間足、日足など)
- Moving Average Period:期間を指定(20、50、75など)
- Moving Average Method:種類を指定(Simple=SMA、Exponential=EMA)
- Moveing Average Applied Price:適用価格を指定(基本はClose Price=終値)
- Moving Average Shift:移動平均線を前後にずらすときに指定(MTFではあまり使わない)
基本のSMAなら、上部2つの「Moving Average Timeframe」「Moving Average Period」だけ変更すれば表示させることが可能です。
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MTF分析は移動平均線以外もある
MTF分析にはボリンジャーバンド、RSI、MACDなど移動平均線以外にもいろいろな種類があります。
MT4のライブラリでは、「MTF〜」「Multi Time Frame〜」で始まるのがマルチタイムフレーム対応のインジケーターで何十種類も用意されています。
それらを使うことで個性的な分析が可能ですが、「世界中でもっともベーシックな移動平均線がMTF分析の基本」です。
TradingViewでMTF移動平均線を表示する方法
TradingViewなら、MT4よりも手軽にMTF移動平均線を表示させることができます。
まずはインジケーターでSMAを表示させてください。
その後、インジケーターの設定画面を開きます.
インジケーターの設定画面は、画面左上のインジケーター名をクリックして設定アイコンから開くか、チャート上のSMAをダブルクリックして開くことができます。
SMAの期間はデフォルトで「9」となっていますが、以下はスタンダードな「20」で設定した例です。
MTFで表示させるときは、「パラメーター」のCALCULATIONにある時間足はデフォルトは「チャート」となっておりますが、これを表示中のチャートの足種よりも長期に変更してください。
また「時間足の確定を待つ」にチェックを入れるとなめらかな線になりますが、通常のMTFはカクカクとした形状になりますので、チェックを入れないことがポイントです。
以下は、4時間足のチャートに日足のMTF移動平均線を表示させた例です。
丸で囲った部分が、レジスタンスラインとサポートラインとして機能していることが確認できますね。
このように上位足の移動平均線を表示させることで、トレンド転換やトレンドの加速を判断しながら、表示させたチャートの足種でトレードを行っていくことが可能です。
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MTF分析は意味がない?の真相
ネット上には、以下のようなMTF分析には意味がないとする記事も見受けられます。
- MTF分析でトレード(月足、週足、日足が同じ方向でエントリー)すると連敗確率が高くなる。
- MTF分析をすると取引機会が減る。
- MTF分析は月足、週足、日足全てで同じ方向になったときにエントリーする。
しかし本来のMTF分析の考え方から大きく外れた内容もありますので、ここで見解を述べていきます。
FXクイックナビが調査したところ、「トレンドは小さい時間軸から発生し、大きな時間軸まで変化するまでは時間がかかるため、MTF分析に従ってトレードすると連敗確率が高くなって取引機会が減る」とインターネット上に書かれていることが確認できました。
正しくは、トレンドは現在における将来への期待と、過去の価格から影響を受けます。
過去の価格というと、水平ライン(重要となる高値・安値)はもちろん、長期足の移動平均線の動きも重要となってきます。
またMTF分析は「月足、週足、日足で同じ方向になったときにエントリーする」ともネット上に出回っていましたが、これは誤りです。
月足、週足、日足が同じ方向なら強いトレンドなので、確かにこのタイミングを待っていては取引機会は少なくなりますが、滅多にないチャンスだけに連敗確率が高くなるとするのは疑問が残りますし、天底はなかなか取れないので、戻り・押し目を狙う戦略が現実的です。
そもそも短期足でトレードするときに、日足など長期の転換を見失わないためにMTF移動平均線を使います。
そのため1分足などのスキャルピング、日足以上の足種を使ったスイングトレードや長期のポジショントレード向きではありません。
MTF分析は足種は5分〜4時間足の範囲でデイトレード、スイングトレードに向く分析で、日足以下のチャートで使うならポジショントレードも可能です。
なんにせよ、通常の移動平均線をメインに使い、MTF移動平均線は単一チャートでは見えない長期足の方向性を確認したり、サポート/レジスタンスの確認用に組み合わせて使うのがおすすめです。
MTF分析が使えないとするトレーダーは、ただ単にその人が取引スタイル(デイトレード、スイングトレード、ポジショントレード)に見合った使い方が出来ていない可能性が高いです。
そもそも4時間足に日足のMTF移動平均線を表示させるということは、移動平均線を表示させた日足と4時間足の2画面チャートを眺めていることと変わりませんよね。
MTF移動平均線は、どの期間のチャートにどんなパラメーター(足種、期間)で表示させるかがカギとなってきます。
チャート分析の精度を高められるように、いろいろ試してみてはいかがでしょうか。