FXにおいて、プライスアクションは決して無視できない存在です。
プロの人は根拠のあるトレードを行いますが、その意思決定を担うのがプライスアクションだからです。
FXで巨額の利益を手にする機関投資家は、稼げなければ仕事になりません。
相場はゼロサムゲームですから、機関投資家は負けトレーダーの損失から利益を得ています。
いかにプロと同じ目線で相場を見るか、そのためにはローソク足が示すメッセージを掴むことが決めてとなります。
ローソク足には「買い手」「売り手」の攻防、すならち市場心理が反映されています。
そのニュアンスを読み解くことで、テクニカル指標に頼らずとも売買ポイントの判断ができるのです。
もちろんテクニカル指標による買いシグナル、売りシグナルとプライスアクションを組み合わせることで、より明確な売買タイミングの判断に役立てることができます。
それでは、相場を見極めて高精度なトレードするために理解したいプライスアクションについて、基礎から具体的な売買タイミングまで解説します。
プライスアクションとは
Price Actionは直訳すると「価格の動き」、つまり値動きのことを指します。
ロング/ショートの攻防をローソク足から感じ取って相場を予測していくことが、プライスアクションの本質です。
移動平均線をはじめ、テクニカル指標の計算にはレートの始値・終値・安値・高値が使われますが、このベースとなる「値動きそのもの」がプライスアクションなのです。
チャートパターン分析では、ダブルトップ・ダブルボトムなどの形状から売買の判断ができます。
しかしプライスアクションではさらに細分化させた、ひとつひとつのローソク足から読み取ってトレードに活用していきます。
プライスアクションが極めて重要な理由
ローソク足は江戸時代の天才相場師、本間宗久によって生み出されたと言われています。
プライスアクションもローソク足がベースですので、日本の酒田五法と共通点は多いです。
酒田五法よりもプライスアクションを重視する人は多い傾向ですが、実は酒田五法は英訳されてプライスアクションのパターンに組み込まれていることから、どちらが優れているのか、はっきりとは断言できません。
海外でも同時線はDoji、はらみ線はHaramiのように、そのままの名称で定着しています。
しかしながら、マーケットを動かす欧米投資家が重視している視点にこそ注目すべきで、多くの人が同じように見て判断するほど、相場はその方向に動きやすい性質があります。
そしてローソク足の形状で分析することは酒田五法と共通していますが、アプローチに違いがあり、プライスアクションは当日前後の高値・安値・終値をより重視しています。
つまり、ダイレクトな相場の方向性と勢いを重視した設計こそが、欧米流のテクニカル分析手法といえますね。
基本のプライスアクション
ピンバー
ピンバーは、トレンド転換を示唆するローソク足です。
ローソク足の実体が極端に短く、片方のヒゲが長い形状が特徴です。
もともとピノキオ(pinoccio)の長い鼻のイメージから、略してPin Barとなった由来があります。
定義は諸説ありますが、実体を1とするなら長いヒゲは3以上、MT4インジケーターでは最低でも長いヒゲが2/3以上、実体と短いヒゲを合わせて1/3以下と設定されている場合が多いです。
ピンバーのヒゲが極端に長いほどトレンド転換の可能性が高くなり、高値または安値から終値が離れるほど、ヒゲが長くなる要因となります。
またピンバー出現前のトレンド継続期間が長いほど、ピンバー出現後にトレンド転換する可能性が高くなります。
海外では上ピンバーをシューティング・スター、下ピンバーをハンマーとも呼んています。
ピンバーはチャートで重要なサポート、レジスタンスとなります。
そのため相場で最高値・最安値を付けることもあります。
もしピンバーが何度も同じ水準に発生したら、サポート、レジスタンスの力が強く働いていることを示します。
トレンドラインを描画したり移動平均線を使うと、ピンバーによるトレンド転換を判断しやすいでしょう。
なお始値、終値が同一で十字線(同時線)となれば、海外でも「Doji」と呼ばれています。
スパイク(スパイクハイ、スパイクロー)
スパイクハイ、スパイクローは天底で出現するパターンです。
転換を示すチャートでのスパイクバー(Spike Bar)には「ヒゲが長く伸びていること」の意味があります。
和名なら陽線=たくり線か下影陽線、陰線=トウバか上影陰線となります。
ほぼ十字線のピンバーに対し、スパイクバーはやや実体があるとする見解が国内では多く見かけますが、海外ではピンバーもスパイクバーも一緒で区別されていません。
ほぼ実体がないのをピンバー、やや実体があるのをスパイクバーと区別するならば、このスパイクパターンは、ピンバーでも全く問題ないです。
※陳満咲杜さんも動画で、ピンバーとスパイクは特別に違いはなく一緒であると言っていました。
(動画の18:25あたりで解説しています。 )
スパイクハイ
上昇トレンドが形成されたあとに、上ヒゲの長いピンバー(スパイクバー)が出現したら、下降トレンドへの転換を示唆します。
スパイクロー
下降トレンドが形成されたあとに、下ヒゲの長いピンバー(スパイクバー)が出現したら、上昇トレンドへの転換を示唆します。
スラスト(スラストアップ、スラストダウン)
スラスト(thust)には「突き上げる」の意味があり、相場のトレンドを判断することができます。
スラストアップ
日足を例にすれば、前日高値を当日終値が更新していれば、スラストアップとなります。
上昇トレンドのときは、スラストアップが連続して発生します。
スラストダウン
前日安値を当日終値が更新していれば、スラストダウンとなります。
下降トレンドのときは、スラストダウンが連続して発生します。
なお、このスラストをルール化したものとして、ディナポリ手法(ディナポリ・チャート)というトレード手法もあります。
興味がある方はこちらの記事をご覧になってみてください。
ランウェイ(ランウェイアップ、ランウェイダウン)
トラストと同じくトレードに使いませんが、トレンドの強さや継続の判断に用いられています。
ランウェイ(runway)には滑走路、通路の意味があり、レート水準の切り上がり、切り下がりからトレンドを判断します。
ランウェイアップ
ランウェイアップではレート水準が切り上がっている動きを確認し、上昇トレンドの強さと継続具合の確認ができます。
ある足を「n」としたら、前後5本で確認するのが一般的です。
ランウェイアップは2つの条件がルールとなります。
- 起点足の高値が過去5本の高値を超えている。
- 起点足の安値より、先5本の安値が切り上がっている。
上記画像のように、スラストアップの起点となる足は、実体の長い大陽線となるケースが多いです。
ワンウェイアップでは、レート水準が過去から切り上がり、一定期間後も以前の水準に戻らないことを確認できます。
価格が上がる強い上昇トレンドの継続過程で多く見られるパターンとなります。
ランウェイダウン
ランウェイダウンではレート水準が切り下がっている動きを確認し、下降トレンドの強さと継続具合の確認ができます。
ワンウェイダウンのルールは以下です。
- 起点足の高値が過去5本の高値を超えている。
- 起点足の安値より、先5本の安値が切り上がっている。
スラストアップの起点となる足は、実体の長い大陰線となるケースが多いです。
ワンウェイダウンでは、レート水準が過去から切り下がり、一定期間後も以前の水準に戻らないことを確認できます。
レートが下がる強い下降トレンドの継続過程で多く見られるパターンとなります。
ここまでは相場の変化がわかるプライスアクションをご紹介しましたが、ここからは売買ポイントも交えて解説していきます。
ポイントですが、プライスアクションは高値・安値のブレイクを最重視しているので、基本は前回の高値や安値を抜けたらエントリーしていきます。
なおブレイクアウトを想定する方向に、数pips離して新規の逆指値注文を入れておくこともできます。
このあたりは個々の裁量で判断しましょう。
※日足ベースで解説していますが、他の足種でも利用できます。
リバーサル(リバーサルハイ、リバーサルロー)
トレンド転換を示唆するプライスアクションで、合成のピンバーです。
国内ではリバーサルハイ、リバーサルローの呼び名が主流です。
海外では、リバーサルハイはBearish Reversal(ベアリッシュ・リバーサル、弱気のリバーサル)、リバーサルローはBullish Reversal (ブリッシュ・リバーサル、強気のリバーサル)、両方総称してKey Reversal(キーリバーサル)と呼ばれるのが一般的です。
スパイクパターンと同じく、それまでのトレンド継続が長いほど、リバーサル出現後に転換する信頼度は高くなります。
2バーリバーサル
リバーサルパターンは、Two-Bar Reversal(2バーリバーサル)の別名もあります。
陽線と陰線、2つのローソク足を値動きを一つにすると、実質ピンバーとなり反転(リバーサル)を示すからです。
たとえば30分足で2バーリバーサルが出現した場合、その2本が1時間足で1本になる条件であればピンバーで描画されます。
リバーサルハイ
2バーリバーサルが高値圏で出現し、上昇から下落への転換を示唆するパターンです。
- 当日高値(B)が前のローソク足(A)の高値を更新。
- 当日終値(B)が前のローソク足(A)の実体を下回る。
- 当日(B)または翌日(C)に(A)の安値をブレイクアウトで売り。
日足の場合、当日終値は前のローソク足の実体を下回るため、原則は陰線になります。
当日終値が、前日安値を下回るとより効果的です。(前日の下ヒゲより、当日の実体が下に長くなります。)
AよりBの実体が長いためBは大陰線のイメージですが、Aは大陽線、Bは大陰線であるほど、信頼性が高くなります。
なおAの前の足が陽線なら、その足とA、Bを合わせて「3バーリバーサル」といいます。
直前の足が陰線になる場合はこちらのイメージです。
リバーサルロー
底値圏で出現する、下落から上昇への転換を示唆するパターンです。
- 当日安値(B)が前のローソク足(A)の安値を更新。
- 当日終値(B)が前のローソク足(A)の実体を上回る。
- 当日(B)または翌日(C)に(A)の高値をブレイクアウトで買い。
リバーサルハイの逆で、日足の場合、当日終値は前のローソク足の実体を上回るため、原則は陽線になります。
Aは大陰線、Bはそれを上回る大陰線であるほど、信頼性は高くなります。
当日の終値が、前日の高値を上回るとより効果的です。(前日の上ヒゲより、当日の実体が上に長くなります。)
直前の足が陽線になる場合はこちらのイメージです。
リバーサルと後述するアウトサイドバー、フォールスブレイクアウトは同じ場面で出現しやすい特徴があります。
リバーサルは天井圏・底値圏だけではなく、サポートやレジスタンスで重要な分岐点にも出現しますが、こういった場面で複合サインを出すことも多々あります。
インサイドバー(はらみ線)
インサイドバーは保ち合い相場やトレンド発生前のスピード調整の場面で出現します。
またアウトサイドバーと交互に現れやすい特徴もあります。
パターン形成の軸となる母線を主として、上下のヒゲに1本でも収まればインサイドバーの完成となります。
2本、3本と内包されるバーが増えるほど、その後の大きなブレイクアウトに期待ができます。
これは買いと売りの攻防が対立して膠着(こうちゃく)している動きで、ブレイクアウトして攻防を制した方向にエントリーする形です。
上の画像は、よくある上昇トレンドのときに売り勢の圧力で動きが鈍ったものの、買い勢が制して再び上昇する動きです。
インサイドバーは母線の高値または安値をブレイクアウトする方向に注目して、トレード前に相場は今どちらのトレンドであるか確認しておきましょう。
アウトサイドバー(包み線)
日足ベースの場合、インサイドバーはパターン形成が今日なら、翌日のブレイクアウトでエントリーします。
対して、アウトサイドバーは当日が母線となるため、当日高値・当日安値のブレイクアウトでエントリーができます。
リバーサルと似ていますが、リバーサルローを例にすると、当日の安値更新は共通ですが、「リバーサルローは当日終値が前日の実体を上回ること」に対し、「アウトサイドバーは当日終値が前日高値のヒゲを上回ること」が違いとなります。
アウトサイドバーが天井圏や底値圏で発生したらトレンド転換を示唆しますが、こういった場面で何度もアウトサイドバーが発生するときは相場に迷いがあることを表します。
またインサイドバーのように保ち合い相場でも出現しますが、このときはトレンド方向へのブレイクアウトに注目です。
大陽線や大陰線ののち、それを包み込むほどの大陰線か大陽線が出現したら、それまでのトレンドをくつがえす大きな動きが出ていると判断して注目していきましょう。
※微妙に定義が異なりますが、FXでは「包み線、包み足、抱き線、抱き足=アウトサイドバー」「はらみ足、はらみ線=インサイドバー」と混同して呼ばれています。
ですが基本的に「ヒゲにライン描画をして、扇状に広がればアウトサイドバー、扇状に狭まればインサイドバー」の認識で問題ありません。
まずエンゴルフィンバー(巻き込むバーのこと)という呼び名もありますが、これもアウトサイドバーと全く同一です。
残念ながら国内の情報サイトでは曖昧な情報も多く、記載が統一されていませんが、英語圏の複数の教育サイトでは「エンゴルフィンバー=アウトサイドバー」の認識で共通になっているのが主流です。
世界共通の機関でルールが統一されている訳でもないので、本やサイトによっても書かれていることに違いが出ているんですね。
実際にはインサイドバーよりもはらみ線、アウトサイドバーよりも包み線の方がルールが厳格です。
母線の実体にヒゲを含んでもいいのがインサイドバーとアウトサイドバー、含んではいけないのがはらみ線と包み線がルールとなっています。
しかし株式と異なり、FXでは終値から始値にレートが大きく跳ねることが少ないため、はらみ線、包み線になるケースは少ないです。
本来インサイバー、アウトサイドバーは、はらみ線や包み線と違って陰陽の区別がありません。
そのためリバーサルハイなら前日が陰線、リバーサルローなら前日が陽線となるケースもときにはあります。
しかし定義が分かりやすいインサイドバー、アウトサイドバーを中心に考えて、「陽陰が切り替わっている」「インサイドバーなら前日の実体にヒゲも収まっている」「アウトサイドバーなら前日のヒゲに加えて実体も含んでいる」ほど信頼性が高いと理解しておけばいいと思います。
フェイクセットアップ
フェイクセットアップはアメリカ流で「偽りの身のこなし」の意味があるように、ダマシを意味するプライスアプションです。
トレンドの反転時のみに出現し、ダマシによって反対方向への値動きが加速しやすい、逆転シグナルとなります。
※下落→上昇転換の例ですが、上昇→下落転換の場面でも出現します。
重要なサポートやレジスタンスの節目では、買い勢力と売り勢力が膠着しやすく、上記画像の例でいうと買い勢力の勝利により、トレンドが反転する様子です。
フェイクセットアップは短期的に重要なサポートやレジスタンスでのヒゲがダマシとなり、このダマシこそが反対方向に値動きが加速する要因と判断されています。
フォールスブレイクアウト
フォールスブレイクアウト(false breakout)には「間違った突破」「失敗したブレイクアウト」の意味があります。
フェイクセットアップと似ていますが、こちらは重要なサポート・レジスタンスのブレイク失敗のダマシです。
そのため短期間のフェイクセットアップに対し、フォールスブレイクアウトはより長い期間のプライスアクションの認識で問題ありません。
※下落→上昇転換の例ですが、上昇→下落転換の場面でも出現します。
天井圏・大底圏でブレイクアウトに失敗し、上ヒゲか下ヒゲの発生がフォールスブレイクアウトとなり、逆転シグナルとなります。
フォールスブレイクアウトが発生したら、その後に発生しやすいリバーサル、アウトサイドバーによるブレイクアウトで売買タイミングを探ってみてください。
3バープルバック
国内ではマイナーですが、海外ではけっこう重宝されているのがブルバックパターンです。
プルバック(Pullback)はトレンドにおいて一時的に止まったり逆行する動きのことで、日本語ではちょうど押しや戻りの調整局面にあたります。
3バーが示すように、上昇トレンドであれば、陽線のあとに陰線が3本連続して出現することを指し、直近高値のブレイクアウトを売買タイミングと捉えていきます。
インサイドバーのように、トレンド方向における一時的に膠着する調整局面で出現しやすいのが特徴です。
ioiパターン
Inside Outside Inside Price Patternを略したのがioiパターンです。
名称通りインサイドバー、アウトサイドバー、インサイドバーが連続して出現するパターンです、
出現頻度はそれほど多くなく、これまでご紹介したタイプに比べるとやや難しいパターンとなります。
もしoiパターンならば、アウトサイドバーとインサイドバーの組み合わせで、ひし形のようなイメージです。
主にトレンド反転を示し、前の足をブレイクアウトしたらエントリーする形となります。
これらは元々、アル・ブルックスが著書「プライスアクションとローソク足の法則」で解説していたパターンです。
このほか同氏によるパターンは以下。
- iiパターン:インサイドバー2つの連続。
- iiiパターン:インサイドバー2つの連続。iiパターンよりも信頼性が高い。
- oioパターン:アウトサイドバー、インサイドバー、アウトサイドバーの連続。
- ooパターン:アウトサイドバーを包むようにアウトサイドバーが出現。
このほかのプライスアクションなら、NR7にも注目してみてください。
プライスアクションを学べる書籍
本格的にプライスアクションを学ぶなら、まずは分かりやすい陳満咲杜氏の本を読み、より深く学ぶならアル・ブルックス氏の本を読むのがおすすめです。
このほかにもプライスアプション、移動平均線、フィボナッチを組み合わせた「ディナポリ・チャート」という分析手法も存在します。
チャート分析の金字塔的な手法ともいえる「ディナポリ・チャート」は、こちらの記事で解説しています。
プライスアクションをチャートでかんたん表示するには
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