移動平均乖離率の見方・使い方について解説します。
テクニカル指標名 | タイプ | 分析適正 |
---|---|---|
移動平均乖離率 | オシレーター系・時系列 | 逆張り、順張り |
移動平均乖離率とは?
移動平均乖離率は、価格が移動平均線からどのくらい乖離しているか(=離れているか)を表す、オシレーター系のテクニカル指標です。
一般的なオシレーター系と同じように、売られすぎ・買われすぎの判断ができるテクニカル指標ですが、ベースが移動平均線ですからトレンド系の分析にも使うことができます。
移動平均線には「平均から離れすぎた価格はいずれ適正な水準に戻るだろう」という考え方が根底にあります。
つまり、この現在レートは移動平均線どのくらい離れているかをパーセンテージで示すのが、移動平均乖離率です。
移動平均乖離率の計算式
$$ 移動平均乖離率 = \frac{(当日の終値 – 移動平均の値)}{移動平均の値} × 100 $$
移動平均線は設定期間を長くするほど信頼性は高くなるものの、急激な価格変動に弱くトレンド転換のサインが遅くなってしまいます。
このデメリットを解消するために考案された移動平均乖離率は、相場の天井・大底を見るのにとても役立ちます。
移動平均乖離率の見方と使い方
期間(パラメーター)は、移動平均線と同じように以下がメジャーです。
- 日足:5日、21日、25日、75日、100日、200日など
- 週足:9週、13週、26週、52週など
いつも使っている移動平均線が21日なら、移動平均乖離率を21日に合わせるのもいいでしょう。
株式投資では25日の場合、以下の数値が相場の経験則とされています。
- ±5%以上で相場は調整局面を迎える。
- +10%以上で天井、−10%以上で大底になる。
このプラス、マイナスの乖離率ですが、設定した移動平均線の期間や通貨ペアごとの変動幅、またそのときの相場動向によって変わってきますので、注意するようにしてください。
FXでは±3%を大まかな目安に
トレンドによっても異なってきますが、FXでは「+3%」「-3%」を大まかな目安として捉えてみてください。
こちらの例をご覧ください。
以下の日足チャートでは、乖離率の最大値が「4.0〜5.0%」、最低値が「-1.8〜-3.0%」となっています。
それぞれが天井圏・大底圏となり、反転したらシグナルとして判断に活用することができます。
また上記例では、天井圏だけではなく「約2.0〜3.0%」もトレンド転換のポイントとして効いていることが確認できます。
通貨ペアや足種によって上下のパーセンテージが異なって来ますので、どの水準が効果的であるか、しっかり見極めるようにしてください。
- 移動平均乖離率が大底圏で反転したら買いサイン。
- 移動平均乖離率が天井圏で反転したら売りサイン。
こちらの天底での反転が、移動平均乖離率の基本的な売買サインとなります。
0ライン、乖離率の傾きでトレンドを判断する
多くのオシレーター系テクニカル指標と同じように、移動平均線乖離率では0ラインやラインの傾きでトレンドを判断することができます。
0ラインでトレンドの強さを見る
センターラインとなる「0ライン」は、0%に位置します。
もし現在の価格と移動平均線が同一なら、乖離率は0%となります。
価格が移動平均線よりも上なら、乖離率は0ラインより上(プラス)の水準となり、上方乖離となります。
価格が移動平均線よりも下なら、乖離率は0ラインより下(マイナス)の水準となり、下方乖離となります。
この0ラインでは、MACDなどと同様にトレンドの強さを見ることができ、0ラインを勢いよく抜けてきたら、強いトレンドの継続と判断することができます。
- 移動平均乖離率が0ラインを上抜けしたら買いサイン。
- 移動平均乖離率が0ラインを下抜けしたら売りサイン。
センターラインは一般的に0%が基準となりますが、JFXやヒロセ通商のように1%が基準となるチャートもあります。
乖離率の傾きでトレンドを判断
移動平均乖離率の傾きから、トレンドの強弱を判断することができます。
価格と移動平均線が同一なら0%となりますから、0%のあたりで水平方向に推移しているときは、トレンドがない相場であることを示します。
そして乖離率の傾きがゆるやかに推移していれば、トレンドが緩やかに継続していることになります。
もし乖離率の傾きが急な角度で推移しているなら、トレンドが強いということになります。
そして急角度で反転したときは、大きな価格変動によるトレンド転換を示唆します。
移動平均線も組み合わせた分析手法
ローソク足に移動平均線を表示させて移動平均乖離率と併用することで、より高い精度に期待ができます。
以下は先ほどのチャートを1時間足にして、短期移動平均線(5SMA)を表示したものです。
移動平均乖離率が天井圏・大底圏から反転後、ローソク足の実体(終値)やヒゲが、移動平均線を抜けてくる動き注目してください。
移動平均線は上向きなら上昇トレンド、下向きなら下降トレンドですので、移動平均線がトレンド方向に傾いていて、さらに終値で抜いてくることがポイントとなります。
- 移動平均乖離率が大底圏で反転後、陽線の終値が上向きの移動平均線を上抜いたら買いサイン。
- 移動平均乖離率が天井圏で反転後、陰線の終値が下向きの移動平均線を下抜いたら売りサイン。
移動平均乖離率が天底で反転するタイミングに比べると、売買判断は遅くなるものの、より高い信頼性に期待できる分析方法となります。
移動平均乖離率をトレンドラインで分析する
通常はローソク足に描いて分析するトレンドラインですが、移動平均乖離率にも応用ができます。
上昇トレンドであればレジスタンスラインの上抜け、下降トレンドならサポートラインの下抜けを狙っていきます。
天底での逆張りに比べると利幅は少なくなりますが、トレンドができてからエントリーすることになりますので、より信頼性が高まる手法といえます。
なお上記の参考チャートである外為どっとコムのG.comチャートでは、オシレーター系テクニカル指標のエリアにもトレンドラインを描けることも特徴となっています。
移動平均乖離率のダイバージェンス
またオシレーター系特有の「ダイバージェンス」は移動平均乖離率にも出現します。
価格とオシレーター系テクニカル指標の逆行現象のことを、ダイバージェンスといいます。
ダイバージェンスはそう多くは出現しませんが、信頼度の高いシグナルとして判断されています。
日足など長期の足種でダイバージェンスが出現したらトレンド転換の可能性が高くなりますので、ぜひ注目してみてください。
移動平均乖離率の注意点は?
移動平均乖離率が有効的な局面は、ローソク足が移動平均線を大きく抜けるといった、相場が大きく動いているときです。
急激な価格変動に移動平均線が追いつかず反応が遅れているほど、移動平均乖離率が有効的となります。
反対に、値動きがおだやかな相場のときは、移動平均乖離率は有効的ではありません。
値動きが小さければ移動平均線は横ばいに推移しますが、移動平均乖離率も比例して変動幅が小さくなり、横ばいに推移するため、転換の判断ができなくなってしまうからです。
保ち合い相場のときに大きな値動きに期待するなら、チャートパターンを分析してトレンドラインのブレイクアウトを狙った手法を意識してみてください。
【まとめ】移動平均乖離率の売買サインなど
基本的な使い方をまとめました。
- 相場の天底判断に使われている。
- 移動平均乖離率の角度はトレンドの強さに比例する。
- 値動きが小さい相場を苦手とする。
- 移動平均乖離率が大底圏で反転したら買いサイン。
- 移動平均乖離率が0ラインを上抜けしたら買いサイン。
- 移動平均乖離率が大底圏で反転後、陽線の終値が上向きの移動平均線を上抜いたら買いサイン。
- 移動平均乖離率がレジスタンスラインを上抜けしたら買いサイン。
- 価格の安値は切り下がっているが、移動平均乖離率の安値は切り上がっているとき。(買いのダイバージェンス)
- 移動平均乖離率が天井圏で反転したら売りサイン。
- 移動平均乖離率が0ラインを下抜けしたら売りサイン。
- 移動平均乖離率が天井圏で反転後、陰線の終値が下向きの移動平均線を下抜いたら売りサイン。
- 移動平均乖離率がサポートラインを下抜けしたら売りサイン。
- 価格の高値は切り上がっているが、移動平均乖離率の高値は切り下がっているとき。(売りのダイバージェンス)
各社のチャート機能は、こちらのページで詳しくご紹介しています。
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