ダウ理論とは?6つの基本法則と使い方をわかりやすく解説!

ダウ理論6つの基本原則、使い方を解説

ダウ理論とは、アメリカのジャーナリストであり、ウォール街の金融ジャーナリズムの先駆者の一人であるチャールズ・ダウ(Charles Dow)が提唱した、投資家の市場分析における基本的な考え方を体系化したものです。

このダウ理論の理解を深めることで、マーケットの動向を予測するための基礎的な考え方を身に付けることができます。

世界初となる平均株価の概念を用いて、株式市場の動向を見極めるためにダウ理論は考案されましたが、FXをはじめどんなマーケットの分析にも応用することができます。

それでは詳しく見ていきましょう。

目次

ダウ理論生みの親「チャールズ・ダウ」

チャールズ・ダウは、ダウ・ジョーンズ・アンド・カンパニー(Dow Jones & Company)を共同設立し、1882年に最初の金融ニュースサービスである「ダウ・ジョーンズ・ニュース・サービス」を創設しました。

また、彼は「ウォール・ストリート・ジャーナル」の創刊にも関わっています。

ダウ理論による市場の動向を把握するための基本的な考え方は、ダウが定期的に発行していた「ウォール・ストリート・ジャーナル」のコラムでも当時広く説明されていました。

そして1884年にチャールズ・ダウは、世界で初となる平均株価指数を考案しました。

勘がいい方はお気づきだと思いますが、NYダウやダウ平均の呼び名でお馴染みの「ダウ・ジョーンズ工業株30種平均」に彼の名前が冠されていますね。

この指数は世界的に株価指数の先駆けとなり、現在でもアメリカの主要な株価指標の一つとして注目されています。

ダウ理論の基本原則

ダウ理論は、6つの基本原則で構成されます。

  • 市場(価格)はあらゆる情報を織り込む
  • トレンドには3種類ある
  • 主要トレンドは3段階からなる
  • 平均株価は相互に確認する必要がある
  • トレンドは出来高で傾向を確認できる
  • 明確な転換が出現するまでトレンドは継続する

市場(価格)はあらゆる情報を織り込む

ダウ理論は効率的市場仮説(EMH)に基づいて機能し、資産価格には入手可能なすべての情報が組み込まれています。

テクニカル分析において、市場価格に影響を与えているあらゆる情報はすべて価格に反映される、という基本的な考え方があります。
価格は需要と供給の変化を反映したものであり、需要が供給を上回れば価格は上昇し、供給が需要を上回れば価格は下落します。
つまり需要と供給に影響を与える、あらゆるファンダメンタルズ要因(材料)が市場価格に反映されることになります。

このファンダメンタルズ要因には、企業や業界に関する情報、経済指標や金融政策、自然災害、戦争、天災などがあります。

投資家は過去のデータを分析して、将来の市場動向を予測することができます。
しかし最終的には、入手できるすべての情報がマーケットに反映されて価格が形成される、とするのがが1つ目の原則となります。

トレンドには3種類ある

ダウ理論の定義では、価格は連続する高値、安値がそれぞれ前の高値、安値より上に位置するかぎり上昇トレンドが存在します。

つまり強気トレンド(上昇トレンド)とは、山と谷の形成が連続して上向きのパターンとなります。
反対に弱気トレンド(下落トレンド)は、山と谷の形成が連続的に下降するパターンとなります。

ダウ理論の強気相場
ダウ理論の弱気相場

ダウ理論では、こうしたトレンドを3種類に分類されています。

  1. 主要トレンド(長期トレンド):通常は1年~数年のサイクル。
  2. 二次トレンド(中期トレンド):通常は3週間~3ヶ月のサイクル。
  3. マイナートレンド、または日々の変動(短期トレンド):短期なら数時間、通常は3週間のサイクル。

チャールズ・ダウは、景気循環の予測に主要トレンドがもっとも重要であると位置付けています。
相場の方向性を示す主要トレンドの動きに応じて、強気相場または弱気相場とも呼ばれます。

ダウ理論の主要トレンド(長期トレンド)

主要トレンドはどちらの方向にも進む可能性があり、上昇する場合は強気トレンド、下降する場合は弱気トレンドと呼びます。

それぞれのトレンドは独立したものではなく、二次トレンドは主要トレンドの調整局面として、マイナートレンドは二次トレンドの調整局面として捉えていきます。

二次トレンドは主要トレンドの調整局面と見なされ、主要トレンドに対して逆方向の変動のことです。
通常3週間から3ヵ月間継続し、調整幅は通常33%〜55%ですが66%に及ぶこともあります。

ダウ理論の二次トレンド(中期トレンド)

例えば上昇トレンドにおける二次トレンドの調整は押し目となり、主要トレンドのトレーダーが利益を確定していることを意味します。

マイナートレンドとは市場の日々の変動、つまり短期で投機的な動きのことを示します。
二次トレンドの短期的な修正による値動きのことで、通常は3週間、わずか数時間となることもあります。

多くのマイナートレンドは、ニュースに関連した短期トレーダーの取引による変動によるものです。
一部のトレーダーは、これをノイズとも呼びます。

主要トレンドは3段階からなる

ダウ理論では、主要な長期上昇トレンドと長期下降トレンドは3つの段階で経過するとされています。

3段階の主要トレンド

長期上昇トレンドにおける3つの段階はこのようになります。

第1段階
(先行)
株価は底を見つけ始め、取引量の増加とともに静かに価格が上昇します。
二次トレンドの安値は前の安値を上回って形成され、市場が堅調になるにつれて静かな期間が続き、その後上昇が始まります。
前回の高値を超えると、第2段階の局面となります。
先行型の投資家による買いが長期上昇トレンドを形成するきっかけとなり、いわゆる底値買いをする仕込みの段階といえます。
第2段階(追随)価格の急上昇に気付いた、多数の一般投資家が参入し始めます。
一般にもっとも長い局面となります。
第3段階(過剰)ニュースやSNSで広く取り上げられ、景気に対する強気の見方も後押しし、次第に一般投資家の参加が増えます。
第1段階で買い付けた経験豊富な投資家が利食い売りを始める一方で、多くの一般的な投資家がポジションを増やし続けるポイントとなります。
長期トレンド形成の最終段階を迎えます。
長期的な上昇トレンド形成の段階

長期下降トレンドにも3つの段階があります。

第1段階
(先行)
企業収益に比較して、株価の異常なまでの割高感に投資家が持ち株を売り始めます。
下落のニュースがさまざまなチャネルを通じて、投資コミュニティ全体に拡散され始めます。
第2段階
(追随)
景気悪化と企業業績の急速な減益により急落し、出来高も急増する恐慌局面となります。
一般的な個人投資家は、損失を減らすために株式を売却してポジションを解消します。
上昇トレンド時とおなじく、こちらも一般に最も長い局面となります。
第3段階
(絶望)
投資家は調整や反転の希望を失い、最後まで売りを我慢していた投資家が大規模な投げ売りを続けます。
最悪となりうるニュースがすべて織り込まれた時点で、弱気市場は終焉を迎えます。
長期的な下降トレンド形成の段階

平均株価は相互に確認する必要がある

ダウ理論では、株式市場は「工業株平均」と「鉄道株平均」の2つの平均株価で形成されると考えられました。

ダウが活躍した時代のアメリカでは、工業生産が盛んになるとともに、製品を輸送するための鉄道が整備された時期ででした。
工業生産が好調なら鉄道は貨物を輸送することで利益を得られることで、工業生産の業績はタイムリーに鉄道業の業績に影響しました。
つまり工業株平均と鉄道株平均が同じシグナルなら強気相場とする考え方が、そもそもの理由です。

あらゆる景気要因が好調であれば、2つの平均株価は同時に高騰を続けるはずです。
一方の平均株価が逆の傾向を示したり、それらが同じ動きを示さなくなった場合、景気が好調であっても強気相場は終焉に近づいていると判断されます。

2つの平均株価は本来バラバラに動くことを前提として、相互を比べて同じシグナルを示すことを確認することがダウ理論の重要な要旨となります。

もともとNYダウは、鉄道株9種を含む11種だけの平均株価で構成されていました。
1897年には12種の工業株平均と20種の鉄道株平均に分けられ、1928年には工業株平均は30種となり、1929年には公共株平均が加わった経緯があります。

今日のNYダウは業種に関わらず、アメリカを代表する30銘柄で構成されていますので、現在はこの理論は有効ではありません。
もし現代に応用するなら、NYダウやS&P500(ともに大型株)とラッセル2000(小型株)を対比するなど、複数の株価指数や銘柄で比較するやり方ができます。

FXに応用するなら、相関しやすい同一大陸・地域の通貨ペアが同じ動きをしているか注目するやり方ができます。
代表的な通貨は米ドルとカナダドル、ユーロとポンド、豪ドルとNZドルとなります。

トレンドは出来高で傾向を確認できる

チャールズ・ダウは、シグナルを確認するにあたり出来高(売買数)が2番目に重要な要素と定義しています。

価格が主要トレンドの方向に動くと取引量は増加し、逆に動くと取引量は減少します。
出来高が少ない場合は、トレンドが弱いことをを示します。

価格が上昇しても出来高の上昇が伴わないときは、トレンド反転を示唆します。

下降トレンドから反転する場合も同様です。
通常は価格が下落するときに出来高は増加して、反発するときは減少しますが、価格が下落して出来高が減少すれば、トレンド反転を示唆します。

出来高の増減に注目する理由として、多数派が主要トレンドで取引する投資家であり、二次トレンドやマイナートレンドで取引する投資家は少数派とする考え方によるものです。

このようにダウ理論では主要トレンドを重視していますが、トレンド発生の確認方法として出来高の推移も重視しています。

FXでは出来高を確認するのは難しいですが、インターバンクオーダーや一部のFX業者が提供している注文情報を活用することで、多くの注文が入っている価格を知ることができます。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

なお高機能チャートのTradingViewを使えば、出来高をチャートでチェックすることも可能です。

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明確な転換が出現するまでトレンドは継続する

この原則は、ダウ理論におけるトレンド追随手法の基本となります。

主要トレンドの反転は、二次トレンドと混同される可能性があります。
そのためトレンド継続中のとき、二次トレンドなのか主要トレンドの反転なのか判断することは、ダウ理論の中でも最も難しいとされています。

トレンドが形成されたらそのまま継続しようとする性質があることから、トレンド継続の局面において「調整」なのか、「トレンドの転換」なのかトレンドの変化を見極めることが重要となってきます。

以下は高値から下落を示す「売りシグナル」です。

フェイラースウィング
フェイラースウィング
ノンフェイラースウィング
ノンフェイラースウィング

フェイラースウィングのCはAの高値を上回ることができなかったため、Bの安値を下回るS1が売りシグナルとなります。

ノンフェイラースウィングではBをS1を下回ったものの、DからEにかけての反発がCに届かず、その後にDを下回ったS2が売りシグナルとなります。

以下は安値から上昇を示す「買いシグナル」です。

フェイラースウィング・ボトム
フェイラースウィング・ボトム
ノンフェイラースウィング・ボトム
ノンフェイラースウィング・ボトム

フェイラースウィング・ボトムのCはAの安値を下回ることができなかったため、Bの高値を上回るb1が買いシグナルとなります。

ノンフェイラースウィング・ボトムではBをb1を下回ったものの、DからEにかけての反発がCに届かず、その後にDを上回ったb2が買いシグナルとなります。

4つの売買シグナルですが、ダブルトップ、ダブルボトムヘッドアンドショルダーをイメージすると分かりやすいです。

トレンド転換を見極めるツールには水平線トレンドライン(サポートライン、レジスタンスライン)、移動平均線などが挙げられます。

テクニカル指標にはオシレーター系のRSIストキャスティクスなどがありますが、相場の勢い・過熱感の判断に使うオシレーター系はトレンド転換のシグナルを正確に捉えるには向いていないといえます。

ダウ理論で重要なポイント

これまで解説したほかに、ダウ理論には2つの重要なポイントがあります。

レンジ相場後のトレンドに注目する

ダウ理論では、株式市場において価格が大きな上下の値動きを見せたあと、数週間にかけて平均株価の勝落率が5%の範囲内で推移する相場のことを「ライン」と呼んでいます。
ラインは取引範囲を形成する水平線のことで、横方向に推移するときは上値同士と下値同士を水平に結ぶ線を引くことができます。

つまりラインとは「レンジ相場」や「ボックス相場」のことを指しており、ライン形成は保ち合いが発生する調整局面で発生します。
そしてダウ理論では、平均株価の暴落率が5%の狭い範囲内で変動する相場のことを定義しています。

上下どちらの方向にブレイクアウトするかは不明ですが、ラインが長くなるほど、それなりの期間にかけてブレイクアウト方向に継続するとされています。

またダウ理論では、ダブルトップ、ダブルボトムが形成された場合、上昇または下落の終焉を示す根拠がマーケットに存在するとされています。

通常、保ち合いのチャートパターンは「保ち合いの最大変動幅分」をベースとして利食い目標に設定します。

保ち合いについては詳しくこちらで解説しています。

終値を重視する

ダウ理論では終値以外の始値、高値、安値重視はされていません。
重視されているのは「終値のみ」です。

つまりザラ場(取引期間中)の値動きで高値・安値をつけても、売買シグナルは有効とはならないのです。

終値は1日の動きを最終的に集約した価格であり、翌日以降の相場の投資行動にもっとも影響を与える価格であることがその理由です。

FXで有名なチャート分析手法として、ディナポリ・チャートがあります。

ディナポリチャートでもダウ理論と同様に「終値」を重視しており、ディナポリ氏によって考案されたさまざまな分析手法がありますので、ぜひチェックしてみてください。

ダウ理論への批判

ダウ理論にはいくつかの悲観的な意見もあります。

売買シグナルが遅い

ダウ理論の売買シグナルは遅すぎると批判されています。

一般にダウ理論では上昇トレンドの第2段階で直近高値を抜けた時点で買いシグナルとしていますが、この時点で平均20〜25%の投資機会を失っているとされてます。

こうした遅効性は相場予測に大きな欠点ともなりますが、ダウ理論の目的なトレンドの予測ではなく、主要な強気相場または弱気相場のトレンドのシグナルを認識することを目的としています。

アメリカでもっとも著名な投資週刊誌「バロンズ紙」には、1920年〜1975年のデータでダウ理論による相場強弱のシグナルは68%が当たっていたと掲載されました。

このようにダウ理論は、過去のデータにおいても効果を発揮していることが実証されています。

中期トレンドへの投資には不向き

前述のとおり、ダウ理論は主要トレンドを特定して大きな動きを捉えることを目的としており、中期トレンドについては補足的な役割と判断されていました。

しかし現在では、中期トレンドの波動を捉える数々のオシレーター系テクニカル指標が開発されています。

これにより投資機会が大幅に増えたことで、過去に批判されていたこの欠点は解消されています。

まとめ

ダウ理論は平均株価を活用したトレンド分析、保ち合い相場、出来高などの解釈により、1世紀以上にかけてテクニカル分析の原点となっています。

ダウ理論は、トレーダーが仮定や予測を行うのではなく、値動きの事実を見極めるのに役立ちます。

トレンドフォロー戦略としてダウ理論を活用することで、多くの情報から売買判断を行うことができ、より高い利益を得られる可能性もあります。

 初心者の方がダウ理論をしっかり理解するには、すぐには難しいかもしれません。
そのため水平線、トレンドライン、移動平均線、オシレーター系テクニカル指標なども組み合わせて、トレンドの判断や売買ポイントの見極めに活用してみてください。

ダウ理論6つの基本原則、使い方を解説

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