ディナポリ・チャートの考案者、ジョー・ディナポリによるトレード手法として「ダブルレポ」があります。
ダブルレポは正しくはダブル・リ・ペネトレーション(Double RePenetration)といいます。
もうひとつの有名なトレード手法のシングル・ペネトレーションは、ブレッド・アンド・バター(bread and butter, パンとバター)、つまり「日々の食事」に例えられています。
対してダブルレポを例えると、「特別な日の豪華なフルコース」といったイメージですね。
このダブルレポですが、出現頻度が少ない分、シグナルの信頼性は高いとされて注目されています。
それでは、ディナポリ氏のトレード手法「ダブルレポ」について詳しく解説します。
ダブルレポとは?
どんなシグナルなのかは、シングル・ペネトレーションを理解した方はなんとなく想像できるかもしれません。
ペネトレーションには貫通の意味があり、シングル・ペネトレーションはレートが移動平均線(3×3DMA)を突き抜ける動きのことを指します。
シングル・ペネトレーションが1回の貫通なら、ダブルレポは名称が示すように「2回の貫通」を意味するのですね。
形状としてはタブルトップやダブルボトムと同じですが、ディナポリ氏は「タブルトップやダブルボトムの特別なタイプ」としています。
スラスト後、一定ルールのダブルトップ/ダブルボトムを判断し、3×3DMAとフィボナッチを組み合わせてエントリー、イグジットするのがディナポリ式トレードです。
ダブルレポが使える足種
足種に制限がないシングル・ペネトレーションに対し、ダブルレポはディナポリ氏の検証で「日足以上」がもっとも信頼性が高いと判断されています。
そもそもダブルレポは相場の大きな転換を3×3DMAで判断することから、ディナポリ氏は日足以上で使っているのでしょう。
ダブルレポではプライスアプションのスラストが判断材料となっておりますが、判断基準を「陽線の連続のみ」「陰線の連続のみ」「3×3DMAにタッチしない」と厳格にすると、日足以上だとなかなか出現しにくいです。
このあたりの判断は正直、個々の視点によって異なります。
しかし、こういった明確に数値化しにくい部分はアルゴ取引(コンピュータによる売買)の影響を受けにくいため、裁量トレーダーに有利な部分であるとディナポリ氏は述べています。
ディナポリチャートの基礎を知るなら、西原宏一氏の書籍が分かりやすいのでおすすめです。
まずはスラストを探す
シングル・ペネトレーションと同じく、終値を基準で考えなければいけないことはダブルレポも変わらず共通です。
基本的には、終値が3×3DMAを抜けていなければスラストの継続と判断します。
そしてダブルレポの場合、ローソク足は最低8本、理想は15本以上がディナポリ氏の条件となっています。
以下は下降トレンド時のスラスト例です。
上記のスラストダウンでは9番目、13番目が3×3DMAに達していますが、陰線の終値は実体(胴体)の下なので、終値で抜けていません。
以下は、上昇トレンド時のスラスト例です。
1番目の直前で3本が割っていますが、このトレンドなら許容範囲と考えてもいいかもしれません。
15本以上にこだわらず、スラストが長く続くほどダブルレポの信頼性が高くなります。
これは長く続いて上がりきった(下がりきった)トレンドが転換するシグナルと捉えると、理解しやすいです。
トレンド転換のシグナルといっても、その後反転したトレンド方向にエントリーしていきますので逆張りではなく、やはり手法は順張りです。
(ダブルレポを逆張り手法と解説するサイトも見かけますが、それは誤りですのでご注意ください。)
ディナポリ氏はスラストは最低8本としていますが、ユーロ/円の月足やポンド/米ドルの週足チャートで、6〜7本のスラスト後にダブルレポで反転したケースが確認できました。
ローソク足は長期間になるほど信頼性が高くなりますので、週足や月足で天井圏でダブルトップ、大底圏でダブルボトムの形状が明確であれば、それほどスラストの本数を厳格にしなくてもいいのではないかと個人的に思います。
- 1回目の貫通は、スラストが最低8本〜10本続いてから3×3DMAを貫通すること。
- スラストは8本が最低条件だが、「15本以上」継続していればより有効的。
ダブルレポ完成のポイント
ダブルレポが完成と判断できる条件には、あと2つあります。
まず、2つの天井の値(底の値)が近いことが条件となっています。
きれいな形状のダブルトップ/ダブルボトムができることは少ないので、多少近くなくても問題ないと思います。
そして1回目に割り込んでから2回目に割り込むまでの間隔は3〜4本が望ましく、最大で8〜10本までとディナポリ氏は定めています。
この間隔ですが、1回目にブレイクしたローソク足から2回目にブレイクしたローソク足までを数えていきます。
西原宏一氏は、他の要因も見ながら11〜12本程度なら許容範囲だと考えているようです。
テクニカル要因以外で判断しにくいであれば、ディナポリ氏の最大10本で判断するのが現実的かもしれません。
実は、日足以上でダブルレポを探すとなかなか見つかりません。
きれいなやダブルトップ/ダブルボトムを形成していて、その後、教科書通り大きくトレンドが反転しているときでも、スラストが8本未満だったり、割り込みの間隔は11本〜13本のケースも多いことから、あまりにもきれいな形状にこだわると、トレードチャンスを逃してしまいます。
このあたりは過去チャートでダブルレポを探して、パターン出現後のトレンドにぜひ注目してみてください。
- 1回目に割り込んでから2回目に割り込むまでの間隔は3〜4本がベスト。最大8〜10本まで。
- 2つの天井の値(底の値)が近いこと。
ダブルレポの手法【下降トレンド後】
それではダブルレポのトレード手法例をご紹介します。
まずは下降トレンド後のケースです。下記はダブルレポの完成に至る条件です。
スラストダウン後、安値から3×3DMAをブレイクし、再度底をつけてWの形状が見えてきたらトレード機会だと考えていきます。
エントリー
レートが底をつけてから、3×3DMAを2回目のブレイク後、終値が上回ったらエントリーとなります。
シングルペネトレーションと異なり、ダブルレポに関しては終値が確定する前に先行きを予測してエントリーすることも可能、とディナポリ氏は述べています。
そのため、終値が確定する前に、3×3DMAを上抜けたタイミングでエントリーも可能です。
西原宏一氏は終値で判断しており、長期時間軸(例えば日足)でダブルレポが確定後、短期時間軸(例えば4時間足)で押し目・戻りでエントリーする手法のようです。
やはり終値で判断するのが確実ですが、もし終値確定前にエントリーする場合は、上の画像でも確認できる7×5DMAのブレイクに注目したり、MACDとストキャスティクスのコンビネーション、打診買い(打診売り)で少しづつ様子を見ていく、といった判断もできると思います。
利食い
ダブルレポの利食いではフィボナッチ・エクスパンションを使います。
「W」の一方の安値(A)、※ダブルレポが確定となるローソク足までの高値(B)、エントリーポイント(C)の順で描画します。
※大底→1回目の上抜け→下抜けして底→2回目の上抜けで、終値が3×3DMAを上回ってダブルレポ完成までの範囲。
61.8%、100%、161.8%が利食い目標になりますが、相場の大きなトレンド転換を示しますので、トレンドが続く限りは押し目(戻り)で買い増し(売り増し)する戦略もできます。
DMAを使った買い増しテクニック
3本のDMAを使ってポジション追加したり、利食いに活用できます。
グランビルの法則にもありますが、上昇する移動平均線にレートが跳ね返される動きは「買いのシグナル」ですので、買い増しに活用できます。
25×5DMAでトレンドを確認しつつ、3×3DMAを抜いて反転したら買い増し(売り増し)したり、レートと25×5DMAのクロス、7×5DMAと25×5DMAのクロスを利食い目安にも活用できます。
また強いトレンドのときは3本のDMAがきれいに並んで推移しますので、DMAの推移を見てトレンドの強さや転換に注目してみてください。
損切り
ダブルレポだと思ったものの失敗に終わり、再び以前のスラスト方向へ推移したら損切りとなります。
損切りのレートはフィボナッチ・リトレースメントで算出します。
「W」の形状の一方の安値(A)から、3×3DMAを上抜いたローソク足の高値(B)の範囲にかけて描画していきます。
もしWの1回目の安値が低い場合は、そちらを始点にしてください。
61.8%の少し下にストップロスを置き、レートが達したら損切りにします。
フィボナッチ・リトレースメントの損切りは、「Wの形状の一方の安値」と「ダブルレポ確定足の安値」で算出と覚えておきましょう。
ダブルレポの手法【上昇トレンド後】
続いて上昇トレンド後のケースも見てみましょう。
こちらはブレイクからブレイクまでの間隔は5本となっています。
スラストアップ後、ダブルトップの形状が見えてきたらダブルレポの条件をチェックしていきましょう。
エントリー
先ほど買いのケースと同じです。
基本は終値確定でエントリーですが、チャートをずっと見れるなら3×3DMA下抜けでエントリーもできます。
利食い
ダブルトップとなる「M」の形状の一方の高値(A)、※ダブルレポが確定となるローソク足までの安値(B)、エントリーポイント(C)の順で描画します。
※天井→1回目の下抜け→上抜けして天井→2回目の下抜けで、終値が3×3DMAを下回ってダブルレポ完成までの範囲。
7×5DMA、25×5DMAも損切りの判断に使えます。
このケースでは、25×5DMAを下にブレイクしたがその後上昇に転じているため、上に抜いた時点で利食いの判断ができた例です。
損切り
天井圏の場合も同様、「M」の一方の高値とダブルレポが確定となるローソク足の安値で、フィボナッチ・リトレースメントを描画します。
61.8%の少し上にストップロスを置き、レートが達したら損切りにします。
ダマシのダブルレポ・フェイラーにも注目
ダブルレポが失敗に終わったらダマシのシグナルとなり、必然的にダブルレポ・フェイラーとなります。
ディナポリ氏の手法では、この場合はドテン注文(ポジションの決済と反対方向のエントリーを同時に行う注文)で相場が進んだ方向に切り替えていきます。
しかしダブルレポ・フェイラーは精度が高いとされている反面、出現頻度が少なく、相場の天底ではダブルレポを形成することなく反転することも多いです。
そのためダブルレポが発生したら、ダイバージェンスの発生をチェックするのがおすすめです。
またダマシ後のダブルレポ・フェイラーとともに、形状によってはヘッドアンドショルダーとなるケースもありますので注目してみてください。
ダブルレポの売買ルールまとめ
- 1回目の貫通は、スラストが最低8本〜10本続いてから3×3DMAを貫通すること。
- スラストは15本以上の継続ならより有効的。
- 1回目と2回目が貫通したときの間隔は3〜4本がベストで、最大8〜10本まで。
- 2つの天井の値(底の値)が近いこと。
- レートが3×3DMAを2回目のブレイク後、終値が3×3DMAを再び抜けたらエントリー。
- ダブルレポのローソク足の範囲で引いた61.8%を、終値が抜けたら損切り。
(=ダブルレポ・フェイラー、この場合ドテンでエントリー。) - トレンドが続く限りポジションの追加戦略も可能。
- 利食い目標はフィボナッチ・エクスパンションの61.8%、100%、161.8%。
- 3本のDMAをポジション追加、利食い目標に利用できる。
- 損切りはフィボナッチ・リトレースメントの61.8%。
- ダブルレポが失敗に終わったら、ダブルレポ・フェイラーやヘッドアンドショルダーに注目。
下記の順番で記事を閲覧いただくと、ディナポリ・チャートを理解しやすいと思います。ぜひお役立てください。
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