ギャップ(窓)4種類の特徴と取引戦略・注意点を解説!

FX、株式投資などローソク足を使ったチャート分析において、価格が離れて出現する現象のことをギャップ(窓)といいます。

重要な場面でギャップが出現すると、「トレンドが加速」または「トレンドが反転」するように、その後の値動きを示唆する合図ともなります。
そのためプライスアクションにおいて、ギャップに注目してチャート分析に取り組んでいるトレーダーも存在しているのです。

それでは、主な「4種類」のギャップはどんな場面で出現するのか、それぞれの特徴について解説していきます。

そもそもギャップ(窓)とは

ギャップとは、どのような現象なのかイメージつきにくい方は、こちらの画像をご覧ください。

ギャップの例
参考:TradingViewチャート Apple 1時間足

このように、ローソク足の「終値」と、その次のローソク足の「始値」の間にできた空間のことをギャップといいます。

なおこの空間は、日本では窓、酒田五法では空(くう)、欧米ではGapと呼ばれていますが、ローソク足同士の間にできた空間を指すことはどれも同じです。

またギャップが開いた方向によって、以下の呼び名があります。

上窓(Gap Up)と下窓(Gap Down)

  • 上方向の窓開け:上窓、Gap Up(ギャップアップ)
  • 下方向の窓開け:下窓、Gap Down(ギャップダウン)

窓開けといってもさまざまな要因があります。
とはいえ「急激な注文の偏りによる価格の変化」によって値が飛ぶような値動きとなることから、結果として窓が開く形となりやすいです。

これこそが、トレンドの節目にギャップが出現しやすい理由ともいえます。

ギャップはどんな場面で出現する?

ほぼ24時間取引できるFXにおいて、流動性が高い米ドル/円、ユーロ/米ドルなどの通貨ペアは、比較的ギャップとなりにくく、ギャップが発生するのは「月曜日のマーケットオープン時」などに限定されがちといえます。
このほか経済指標や要人発言によるサプライズ、経済に影響を与える出来事などもギャップが発生する要因となります。

これに対して、FXに比べて取引時間が短い株式や株価指数ではギャップが日常的に発生しており、チャートを見るとすぐにギャップを確認することができます。

4種類のギャップ

ギャップには以下の種類があります。

4種類のギャップ

  1. Common Gap(コモンギャップ)
  2. Breakaway Gap(ブレイクアウェイギャップ)
  3. Runaway Gap(ランナウェイギャップ)
  4. Exhaustion Gap(イグゾースチョンギャップ)

それぞれ、ギャップが発生しているトレンドの局面に応じて区別されています。

このほか「イグゾースチョンギャップ+ブレイクアウェイギャップの合体型」となる、アイランドリバーサルというギャップによるローソク足パターンもあります。

ギャップは一般的に、上昇するローソク足の前回の終値から次のローソク足の新しい始値までの5%の増加、または下降するローソク足の前回の終値から新しい始値までの5%の減少によって、ギャップであると定義されています。

とくにブレイクアウェイギャップ、ランナウェイギャップ、イグゾースションギャップは、この5%の価格変動と発生のタイミングによって区別されています。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

コモンギャップ

Common Gap(コモンギャップ)

Commonには「共通の」「一般の」という意味があることから、「一般的なギャップ」を指します。

始値が終値とわずかでも異なればコモンギャップとなり、他のギャップと比べてギャップとなる値幅は小さめです。
ある程度定期的に頻繁に発生しやすいギャップで、それほど重要視されていません。

コモンギャップはトレンドがない相場、すなわちレンジ相場(保ち合い相場)や、月曜日オープン時に発生しやすいギャップであり、開いたギャップはすぐ埋まるケースが多いことも特徴です。
つまりコモンギャップの形成にあたり、なんらかの先行したファンダメンタルズ要因があるわけではないのです。

FXなら新興国通貨、株式なら新興市場など流動性が低い銘柄では、他の投資家による大きめの注文が入っただけでギャップができやすかったりします。

つまりコモンギャップが発生したからといって、売買の機会と捉えないことが賢明といえます。

ブレイクアウェイギャップ

Breakaway Gap(ブレイクアウェイギャップ)

Breakaway GapのBreakには「壊す」「破る」、そしてAwayには「離れて」「あちらへ」、という意味があり、Breakawayは「分離する」という意味があります。

また投資にはブレイクアウトという手法があり、これはレジスタンス/サポートを抜けたタイミングでエントリーする売買手法となります。

つまりブレイクアウェイギャップは、価格が重要なレジスタンスを上抜けたとき、または重要なサポートを下抜けたときに発生するギャップのことです。

この場合のサポートまたはレジスタンスの多くは、トライアングルやウェッジといったレンジ相場でのチャートパターンのほか、ヘッドアンドショルダー、カップアンドハンドル、ラウンドトップ/ラウンドボトムなど天底からの反転を示唆するチャートパターンが該当します。

ブレイクアウェイギャップは強いトレンドの始まりを示唆し、トレンドは今後数週間にかけてギャップの方向に推移する傾向があります。

ブレイクアウェイギャップは、新しいトレンドの確認にも役立ちます。
たとえば下降トレンド後にヘッドアンドショルダーズ・ボトムが形成され、ネックラインの上方にブレイクアウェイギャップが発生したとしましょう。
これは、下降トレンドが終わって上昇トレンドが進んでいることを示唆するため、上昇と予想するトレーダーに強い確信を示し、チャートパターンのブレイクアウトに加えて、さらなる上昇を示す根拠の1つとなります。

ブレイクアウェイギャップの値幅が大きいほど、ギャップ方向へのトレンドがより強いことを示し、取引量(出来高、ボリューム)が増加すれば、ブレイクアウトした方向に継続してトレンドが推移する可能性が高いと確認できます。

逆に、ブレイクアウェイギャップ時に取引量が少なければ、失敗する可能性が高くなります。
このブレイクアウトの失敗とは、価格ギャップがレジスタンスを上抜けた(サポートを下抜けた)ものの、反転して以前の水準に戻ることをいいます。

ブレイクアウェイギャップは、すべての局面で発生するわけではなく、トレンド反転後の初動、または1日の取引時間がスタートしたときに見られやすいです。
そして、重要なチャートパターンからブレイクアウトで発生したギャップは全て、ブレイクアウェイギャップと判断することができます。

株式でのブレイクアウェイギャップに関しては、決算発表、または企業による重要な発表後に発生する可能性が高くなることも覚えておきましょう。

ランナウェイギャップ

Runaway Gap(ランナウェイギャップ)

Runaway GapのRunawayには「逃亡」「暴走」といい意味があり、英語圏ではMeasuring Gap(メジャリングギャップ, 測定ギャップ)とも呼ばれています。

ランナウェイギャップは、現在のトレンドの方向性に向かって、トレンドの中間地点での急騰・急落によって発生しやすいギャップです。
強い上昇トレンド中のギャップアップ、強い下降トレンド中のギャップダウンがこれに該当し、トレンドの加速を示唆します。

これは株式への関心の高まりによって発生しており、上昇方向へのランナウェイギャップを例にすれば、上昇トレンドの最初の値動きに参入せず、押し目/戻りを待っている間に、それが起こらないと判断したトレーダーの参入によって発生するとされています。

また現在のトレンドを勢いづかせるニュースなど、予想外の出来事によってマーケットが熱することから、ブレイクアウェイギャップの後にランナウェイギャップが発生することが多いとされています。

上昇トレンドの場合は、エリオット波動でいうところの推進波の上昇3波か上昇5波、修正波のA波かC波に該当する形となります。

また酒田五法の「三空踏み上げ」は4つの陽線と3つの上窓が、「三空叩き込み」では4つの陰線と3つの下窓が連続して出現するパターンですが、これでいう2つ目の窓に該当することになります。

また今後はトレンドがどれくらい継続するのか、大まかに測定にランナウェイギャップを使うことができます。
これが、欧米で測定ギャップとも呼ばれている理由です。

ランナウェイギャップでトレンドの終点を測定する方法

測定方法としては、トレンドの始点からランナウェイギャップの窓の中心を「1」として、その距離を2倍にした水準がトレンドの終点となるだろうと判断されています。

ランナウェイギャップは通常、長期間にかけて窓埋めとはなりにくいです。

しかし調整局面でのランナウェイギャップは、サポート/レジスタンスのゾーンともなる特徴があり、このギャップを反転すると相場転換を示唆します。
ですからランナウェイギャップ後の値動きで、トレンド方向への勢いが弱かったり、方向性が不透明であれば、ポジションを半分利食いするなどの検討をしてもいいかも知れません。

イグゾースチョンギャップ

Exhaustion Gap(イグゾースチョンギャップ)

Exhaustion GapのExhaustionには「消耗」「枯渇」の意味があります。

つまりイグゾースチョンギャップは、トレンドの最終局面で出現するギャップのことです。

通常は日足チャートで、数週間前の価格の急激な上昇(下落)後、ギャップが発生して反転下落(上昇)する値動きが特徴となります。

イグゾースチョンギャップ発生後にトレンドが変化する理由は、買い手と売り手のバランスの変化によるものです。

このときの転換を判断するには、3つのポイントがあります。

  • 価格が過去数週間または数か月にかけて上昇トレンド(下降トレンド)であること。
  • ギャップが発生中の買い・売りの取引量を確認する。
  • ギャップ反転後、反対方向の取引量が急増していることと、短期間でギャップを埋める動きを確認する。

以下が確認するときの例です。

イグゾースチョンギャップ後の反転を確認する方法
参考チャート:TradingView

ギャップだけに注目すると、ランナウェイギャップなど他のギャップと区別つきにくいです。
しかし取引量にも注目すると、後付けではなくギャップが発生した段階でイグゾースチョンギャップと見極めるのに役立ちます。

なお、株式でもFXでもかんたんに取引量をチェックするなら、デフォルトでチェックできるTradingViewがおすすめです。

アイランドリバーサル

アイランドリバーサル(Island Reversal)はローソク足パターンのひとつで、日本では「離れ小島」とも呼ばれています。
そしてIsland Reversalを直訳すると、「小さな島の反転」という意味があります。

ギャップアップ後のギャップダウン、またはギャップダウン後のギャップアップによって、1本〜数本のローソク足が離れて位置する形状がアイランドリバーサルの特徴です。

これはイグゾースションギャップが発生後、1日〜数日揉み合いとなって、反対方向にブレイクアウェイギャップが発生する、強力なトレンド転換のシグナルとなります。

上昇から下落への転換を「アイランドトップ」、酒田五法では「三川宵(よい)の明星」といい、離れ小島となるローソク足が1本の場合は「三川宵の十字星」といいます。

下落から上昇への転換を「アイランドボトム」、酒田五法では「三川明けの明星」といい、離れ小島となるローソク足が1本の場合は「三川明けの十字星」といいます。

以下はアイランドボトムの例です。

リバーサルボトムとなった日経225
参考チャート:日本経済新聞社

アイランドリバーサルは出現頻度こそ多くありませんが、トレンドの節目で発見したら大きなチャンスと捉えてもいいかも知れません。

詳しくは以下の記事で解説しています。

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FXでは月曜日の窓埋めを狙うトレードが有名

FXのメジャーな通貨ペアでは「買い手」と「売り手」が多いことから、売買の不均衡が起こりにくく、これによって買いたい人と売りたい人の売買が成立しやすいため、高い流動性が特徴となっています。

さらにFXは平日はほぼ24時間取引ができるため、よほどの出来事がないかぎり、米ドル/円などでギャップが発生する機会はそう多くはありません。

しかし例外となるのが、月曜日早朝のマーケットオープン時です。

取引できない週末にファンダメンタルズ要因があったとして、マーケットオープンと同時に注文が一斉に約定することが、月曜日の早朝にギャップができる主な要因です。

このタイミングのギャップは窓埋めしやすい傾向もあることから、FXでは注目しているトレーダーもいます。

詳細はこちらの記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧になってみてください。

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ギャップを活用した取引戦略と注意点

ギャップによる短期トレード、中長期トレードごとの取引戦略と、注意点について解説します。

取引戦略

マーケットの方向性を見極めるためにギャップに注目するトレーダーがいれば、取引する目的でギャップに注目するトレーダーもいます。

前者を例にすれば、上昇している局面でブレイクアウェイギャップやランナウェイギャップを見つけたら、今後は上昇トレンドが継続すると判断するトレーダーです。

対して後者は、ギャップ発生を判断してすぐにポジションを保有するトレーダーを指します。

このギャップ後に取引する戦略は、国内では「ギャップトレード」、欧米圏では「ギャップアンドゴー(Gap & Go)」と呼ばれています。

例えばデイトレードで、上昇トレンドでのギャップアップを例にすれば、トレンドが強いと判断してそのまま買いポジションを保有したり、少し揉み合ってから上昇すると考えるなら、窓埋めを待ってから前日の終値付近に指値注文を入れておく戦略もできます。
もちろん下降トレンドであれば、ギャップダウンで取引することも可能です。

なおギャップアップでポジションを保有する場合、ギャップの底より下(ギャップ前のローソク足の上端付近)に逆指値注文を入れる戦略もできます。

FXでは窓埋め戦略が有名ですが、短期で逆張りを狙うトレーダーは、「時間の経過とともに窓は埋められやすい」傾向があることに着目して、ギャップの反対方向にポジションを建てる戦略ができます。

例えば、ギャップダウンで買い注文を入れる場合は、ギャップ後の安値より下に損切りを設定し、前日ローソク足の終値付近に利食いを設定できます。

中長期トレードの場合、注目すべきはブレイクアウェイギャップとランナウェイギャップです。

この2つのギャップは、大きなトレンドの可能性を秘めていますので、うまくトレンドに乗れれば、イグゾースチョンギャップが発生するまでポジションを保有するか、トレール注文で逆指値注文に達するまでポジションを保有する戦略が可能です。

取引期間に関わらず、ギャップ後に取引量(ボリューム)が増加すれば、その方向に推移する可能性が高くなりますので、ギャップトレードは取引量にも注目してみてください。

またローソク足だけではなく、トレンドライン移動平均線などのテクニカル指標も用いて、トレンドの見極めに役立てていきましょう。

注意点

逆指値注文で損切りを入れていたとしても、ギャップによって大幅に価格がかい離してマーケットが始まった場合、そのレートで約定します。

例えば、FXで上昇予想して、金曜日に130円で買いポジションを保有し、129円に逆指値注文で事前に損切りを入れていたとしましょう。

ギャップダウンによって月曜日の朝のオープンレートが128円となった場合、逆指値注文は128円で成行注文となって損切りする形となります。

つまり値動きへの影響が大きいと考えられる場面(FXなら重要指標発表前や、オープン前にFOMCがあるなど、株式なら決算発表前など)の直前は、あえて取引しない選択をすることで、ギャップによる損失リスクを最小限に抑えることができます。

もしギャップとなりそうな場面で取引するのであれば、IG証券のノースリッページ注文を使うか、ノックアウトオプションで取引すれば、損失を限定しながら利益を狙うことができます。

どんなマーケットでも、通貨ペアや銘柄ごとの流動性によって、ギャップが発生しやすい銘柄、発生しにくい銘柄があります。

例えばNYダウ構成銘柄であれば、NYダウが大きな値動きを見せた場合、結果的に構成銘柄の多くでギャップが発生している可能性が高いといえます。

個別株の場合は、類似するジャンルの銘柄や株価指数の動きに注目してみるのもいいでしょう。

スマホアプリでギャップの発生を逃さない

FX業者が提供するスマートフォンアプリには、変動通知(ボラティリティアラート)という機能を搭載したタイプも存在します。

この機能自体は、ギャップの発生自体を知らせてくれるものではありません。
しかし大きな変動が発生すればプッシュ通知で教えてくれますので、ギャップとなるような場面を判断して売買するのに役立ちます。

このほか、指定レートへの到達を知らせる「プライスアラート」や、経済指標発表をお知らせしてくれる「経済指標アラート」といった機能もあります。

以下は、外為どっとコムスマホアプリ「GFX」の画面例です。

トレードシグナルのプライスアラート
プライスアラート
トレードシグナルのボラティリティアラート
ボラティリティアラート
トレードシグナルの経済指標アラート
経済指標アラート

これらのプッシュ通知機能を使えば、節目となる価格をプライスアラートで設定しておいたり、ギャップとなりそうな変動はボラティリティアラートを、重要なイベントは経済指標アラートを設定しておくと、ギャップとなりそうなタイミングを逃がさずに取引を行うことができます。

ぜひプッシュ通知機能も活用して、ギャップ探しに役立ててみてはいかがでしょうか。

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