FXやCFD、株式投資でも重宝されている注文方法に「トレール注文」があります。
トレール注文は、相場が一方向に向かって推移するトレンド相場と相性が抜群の注文方法です。
トレール注文の仕組みがイマイチわからないという方も、ここでしっかりと理解して、トレンドが強い局面で有効活用しましょう。
それでは、トレール注文を基礎から解説します。
トレール注文とは?仕組みを図解
トレール注文は、正しくはトレーリング・ストップ注文(Trailing Stop Order)と言います。
直訳すると、追従するストップ注文(逆指値注文)という意味があるように、トレール注文のベースは逆指値注文です。
逆指値注文とは?
決済で逆指値注文を使うとき、事前に今より不利な価格で発注しておく注文です。
含み益のときは利食い、含み損のときは損切りができ、最終撤退ラインをあらかじめ仕込んでおくイメージとなります。
買いポジションで決済トレールの例
トレール注文では必ず「トレール幅」を指定します。
レートの高値(買いポジションの場合)と一定のトレール幅を保つことで、トレールライン(損切りのレート)が切り上がっていく仕組みとなります。
そして上昇局面なら、一度上がったトレールラインは、下がることはありません。
以下は買い注文を保有し、決済トレールでトレール幅を50pipsに設定したときの例です。
レートが高値を更新するとともに、トレールラインも切り上がり、直近高値から一定の幅を保っていく動きが分かりますね。
トレール注文のポイント(買いポジションのとき、売りで決済トレール注文をする場合)
- レートが上昇して高値を更新するときは、設定したトレール幅でトレールラインも連動して上昇する。
- 上がったトレールラインは再び高値を更新するまで変わらず、決して下がることはない。
- 直近高値からトレール幅分の下落をした時点で、逆指値が約定となる。
売りポジションで決済トレールの例
売りポジションを保有するときも、買いで決済トレール注文をするときと考え方は一緒です。
レートが安値を更新するたびに、設定したトレール幅に基づいてトレールラインも切り下がっていきます。
下落したトレールラインが上がることはなく、レートが直近の最安値からトレール幅分の上昇をした時点で、決済となります。
トレール注文のメリット・デメリット
それではトレール注文にはどのようなメリット、デメリットがあるのが見ていきましょう。
メリット
- トレンド相場との相性が抜群によい。
- トレンドが強く、さらに長期間にかけてトレンドが継続するほど、利益を伸ばせる。
- 損失限定を相場のトレンドに追従させることができる。
デメリット
- レンジ相場(ボックス相場)とは相性が良くないので、トレンドの見極めが必要。
- 最高値(最安値)で決済できる注文方法ではない。
- トレール幅が狭すぎると値動きのノイズで決済となるため、トレール幅の選定は慎重に行わなければいけない。
トレール注文は順張りトレードで使う注文方法であり、レンジ相場の天底でトレードするような逆張りで使うものではありません。
したがってトレードスタイルとしては、「上昇トレンド(下降トレンド)はこのまま継続するだろう。」と判断する順張りに限定された注文方法となります。
つまり継続的に一方向に推移するときに、とても有効的な注文方法となります。
上昇トレンド時はトレールラインが上がり、下降トレンド時はトレールラインが下がることから、トレンドに合わせて損失が限定される点も、トレール注文の優れた特徴です。
デメリット①レンジ相場と相性が悪い
逆にデメリットとなるのが、レンジ相場であることを誤って判断して、トレール注文で発注してしまうことです。
(予想の反対に動いたら損失になる点では、もちろんトレール注文に限った話ではありません。)
例えば以下ケースを仮定しましょう。
1米ドル=100円で買いポジションを保有し、トレール幅を100pips(つまり1円)で決済トレールを発注したとします。
そうすると、ポジション保有時点のトレールラインは99円です。
この後、為替レートが上昇することなく、予想に反して下落したため、99円で損切りとなりました。
しかしその後の為替レートを見ると、98.90円で反転し、102円まで上昇しました。
このように、トレール幅を大きくするほど変動に耐えやすいです。
相場の予想が外れても、トレールラインにさえタッチしなければ、その後の相場反転により利益になる可能性があります。
反面、トレール幅を大きくすると、予想が外れたときの損失も比例して大きくなってしまうのがデメリットとなるのです。
デメリット②最高値(最安値)で決済できない
トレール注文は直近の高値(安値)を基準に、逆指値注文が変化します。
米ドル/円を100円のときに保有して、決済のトレール幅は100pipsとします。
為替レートが105円まで上昇し、そのときの含み益は500pipsでした。
しかしその後104円まで下落し、決済トレールによる利益は400pipsとなりました。
トレール注文によって利益の追求ができた反面、100pipsのトレール幅によって、天井から1円分のロスが発生してしまうのです。
天井・大底はテクニカル分析での売買判断が難しく、売買サインの発生に合わせてトレードすれば、必然的に反転が勢いづいたタイミングとなります。
投資の世界には「頭と尻尾はくれてやれ」という格言がありますが、トレール注文の最高値・最安値で決済できないデメリットは、執行条件の性質上、しょうがないと割り切るしかありません。
ともあれ予想通りに利益が乗ったら、約定前の決済トレールは注文は一旦キャンセルして、成行注文による決済や、一定の利益を確保した上で逆指値注文を発注し直すことを検討するのもひとつの手です。
デメリット③トレンドに反したノイズに弱い
いくら予想したトレンドの方向性が合っていようと、一時的に暴落(暴騰)が起こってトレールラインに達してしまうと、利益の追求ができずに決済されてしまいます。
例えば、とある週末に変動要因があり、早朝に大きく窓開け(ギャップ)が発生するケースなどです。
あとから相場を振り返ると長期的にはトレンド相場だったとしても、一時的な大変動で意図しない約定をしてしまうこともときには起こります。
効果的にトレール注文を活用するコツ
いかに効率よくトレール注文で利益を追求するかを考えるなら、3つのステップ順に注目していきます。
【長期チャート】ローソク足と移動平均線でトレンド相場を判断
トレール注文するにあたり、上下に大きく動く通貨ペアを選んでしまうと逆指値注文が約定しやすくなるため、はじめはボラティリティ(変動率)が小さい通貨ペアを選ぶようにしてください。
おすすめなのは米ドル/円かユーロ/米ドルで、取引量が大きいことから値動きが安定している通貨ペアです。
逆にポンド/円や新興国通貨はボラティリティが大きいので、トレール注文にはおすすめしません。
肝心となる相場のトレンド判断では、日足や週足のチャートでローソク足と移動平均線の位置関係を見るのがスタンダードです。
- ともに上昇しており、ローソク足が移動平均線の上に位置するなら上昇トレンド
- ともに下落しており、ローソク足が移動平均線の下に位置するなら下降トレンド
レートがジグザグと上下が一定範囲で推移し、移動平均線が頻繁にゴールデンクロス・デッドクロスするときはレンジ相場ですので、トレール注文向きの相場ではないと諦めましょう。
【短期チャート】エントリータイミングを決める
エントリーのタイミングは通常のトレードと同じように、個々の得意な分析で、トレンドの初動でエントリーできたらベストです。
かなりの長期トレードなら日足で判断してもいいですが、日足では売買サインが遅く出現頻度も少ないので、1時間足や4時間足を使っていきます。
移動平均線のゴールデンクロス、デッドクロスを判断材料にするのもいいですが、トレンドフォロー手法の決済トレール注文では、ローソク足が水平線またはトレンドラインをブレイクアウトしたことを確認してからエントリーすれば、より確実性が高いです。
トレンドがしっかり出てくれば、各テクニカル指標ではこのような売買サインが出現します。
- 移動平均線:短期線、中期線、長期線それぞれの傾きが強くなり、それぞれがきれいに広がって推移する。
- ボリンジャーバンド:+2σ、−2σにレートが張り付いて推移する。(バンドウォークという)
トレンドの初動に乗り遅れたら、押し目買い・戻り売りで売買のタイミングを捉えていきましょう。
上昇トレンドなら、ちょっと下がったところで買うイメージです。
移動平均線でいえば、上昇する移動平均線に下落するレートが近づき、タッチせずにレートが再び上昇すれば買いサインとなります。(グランビル買いの法則③)
このほか、ライン描画でフィボナッチ・リトレースメントを使うのもわかりやすいのでおすすめです。
変動率からトレール幅を決める
そのときどきの相場によって変動率は異なるため、トレール幅も発注のたびに算出しなければいけません。
ボラを判断するテクニカル指標で有名な「ボリンジャーバンド」や「ATR」を使って、トレール幅の目安を算出していきましょう。
ボリンジャーバンドでトレール幅を算出
ボリンジャーバンドは、平均レートからどのくらい離れているかを示すテクニカル指標で、ボラの判断に使うことができます。
ボリンジャーバンドを使ったメジャーな算出方法は以下で、±1σの値幅の半値を目安にできます。
{(+1σのレート)-(−1σのレート)}÷ 2
※どの業者もチャートでカーソルを合わせると、±1σが位置する地点のレートを見られます。
上記を例にすれば、+1σの149.268から−1σの147.464を引いて1.804となり、2で割ると0.902(円)となります。
つまり90pipsがトレール幅の目安になります。
もう少しトレール幅を浅めに算出するなら、3で割って算出することもできます。
ATRでトレール幅を算出
ボリンジャーバンドで算出するのに計算が面倒なら、ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)を使うやり方もあります。
ATRは1日の平均的な最大変動幅を示す、相場のボラティリティを判断するテクニカル指標です。
n=14が一般的であり、日足なら直近14日のレートから算出され、相場の値動きが激しくなれば上昇し、穏やかになれば下落する仕組みです。
ATRでトレール幅の算出にあたり、メジャーなのは以下の方法です。
ATRの値 ✕ 2倍
上記の例では、ATRが1.23(今回は小数点3桁以下は割愛しています)なら、2倍で2.46となります。
現在レートから2.46円離れた位置にストップを置く形となり、トレール幅は246pipsとなります。
トレール幅=逆指値であり、これは通常ATRでどの価格帯にストップを置くかを応用した考え方となります。
2倍で計算すればレートにより近い位置にストップを置くことができ、3倍にすればレートから離れた位置にストップを置くことができます。
IG証券の口座保有者が利用できるスマートフォンアプリ「IGTrading」では、ボリンジャーバンドとATRどちらも利用できます。
パーセンテージからトレール幅を算出
テクニカル指標でトレール幅をなかなか決められないなら、損失の許容範囲は総資産の何%までと決めておくやり方もあります。
例えば、FXには「2%ルール」という有名な損失管理ルールがあります。
30万円の資金で損失は2%のルールでトレードするとしたら、ワントレードの最大損失額は6,000円です。
この場合トレール幅は60pipsとなります。
元手となる資金 ✕ 0.02(2%の場合)
実際には感覚的にトレール幅を決める人も多いです。
しかし30pipsで設定した場合、経済指標発表時における上下の動きで刈られるケースもあります。
そのため雇用統計やFOMC政策金利発表などのイベントがあるときは、決済トレールで含み益があるポジションは事前にクローズしておくのが無難です。
やはりそのときのボラによって変わってきますが、中期トレードなら50pips〜、長期トレードなら100pips〜がひとつの目安になってくるでしょう。
なかなかトレール注文を使うタイミングが難しいと感じるなら、損切りは通常の逆指値注文で発注しておき、手動で逆指値レートの変更を繰り返していけば問題ありません。
そしてトレンドがしっかりが出てきてから、トレール注文に切り替えるやり方でもいいと思います。
トレール注文活用術【まとめ】
- おすすめの通貨ペアは、テクニカル分析が効きやすい米ドル/円かユーロ/米ドル。
- 日足や週足といった長期間の足種でトレンドを判断する。
- トレンドの初動に乗り遅れたら、押し目・戻りでエントリーする。
- トレール幅はボリンジャーバンド、ATRなどで検証する。
トレール注文を利用できるFX業者
FX会社名 | 最小 トレール幅 | 新規 トレール注文 | 決済 トレール注文 | トレール機能付き リピート系注文 |
---|---|---|---|---|
外貨ex | 3pips (3銭) | ✕ | ◯ | ✕ |
外貨ネクストネオ | 1pips (1銭) | ✕ | ◯ | ✕ |
外為オンラインFX | 6pips (6銭) | ✕ | ◯ | ✕ |
トラッキングトレード | 6pips (6銭) | ✕ | ◯ | ✕ |
トライオートFX | – | ✕ | ✕ | ◯ |
IG証券 FX | 1pips (1銭) | ✕ | ◯ | ✕ |
楽天FX/楽天MT4 | 1pips (1銭) | ✕ | ◯ | ✕ |
MATRIX TRADER | 3pips (3銭) | ◯ | ◯ | ✕ |
FX PLUS | 1pips (1銭) | ◯ | ◯ | ✕ |
LION FX | 3pips (3銭) | ◯ | ◯ | ✕ |
トラリピ | 通貨ペア毎 ※1 | ✕ | ◯ | ◯ |
※GMOクリック証券、DMM FX、みんなのFXはトレール注文に対応していません。
※インヴァスト証券(トライオートFX)は手動でのトレール注文には対応していませんが、リピート系注文はトレール注文に対応しています。
※1 南アフリカランド/円・トルコリラ/円は0.10円(10銭)、 メキシコペソ/円は0.05円(5銭)、対ドル通貨は0.0020ドル(米ドル/円なら20銭)。
トレール注文発注時の注意点
注文画面でトレール幅を入力するときは設定値に注意しましょう。
多くのFX会社では、注文画面の最小トレール幅は「0.001」となっているのが主流で、これはレートが110.001なら0.001、つまり0.1銭にあたります。
- 米ドル/円でトレール幅を1円にするとき → トレール幅は「1」
- 米ドル/円でトレール幅を10銭にするとき → トレール幅は「0.1」
- 米ドル/円でトレール幅を1銭にするとき → トレール幅は「0.01」
- ユーロ/米ドルでトレール幅を100pipsにするとき → トレール幅は「0.001」
- ユーロ/米ドルでトレール幅を10pipsにするとき → トレール幅は「0.0001」
- ユーロ/米ドルでトレール幅を1pipsにするとき → トレール幅は「0.00001」
とくに対円以外の通貨ペアは慣れないと分かりにくいので、あらかじめ仕組みを理解しておきましょう。
新規トレールができる会社もある!
トレール注文は決済注文で使うのが一般的ですが、JFX、ヒロセ通商、マネックス証券なら新規注文でトレール注文を使うことができます。
新規トレール注文を買いから入るときのイメージです。
現在の価格から◯◯pips上昇したら買いを仕掛けたいときに利用できます。
新規トレール注文で売りから入るケースも同様です。
下降トレンド時に、現在の価格から〇〇pips下落したら売りをしたいときに利用できます。
JFXのスマホアプリ、Matrix Trader 2で新規トレール注文をするには、「通常注文」→「トレール」と進めば発注できます、。
LION FXにはトレール注文だけではなく、多彩な注文方法が搭載されています。
さまざまな戦略でトレードしたいなら、ヒロセ通商がおすすめです。
おすすめのFX業者
GMO外貨
安心感を求めるなら、GMOインターネットグループのFX業者、GMO外貨で決まり!
低スプレッド・高スワップポイントなので、短期売買から長期売買まで幅広く対応します。
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