CFDの数ある商品銘柄において、高い人気を誇っているのが原油です。
原油から石油が作られ、石油からガソリンや軽油が作られます。
ですからガソリン価格の高騰が話題になっているような場面では、マーケットでは「原油価格」の注目度も高くなっています。
そして原油取引といえば「先物」「CFD」「ETF」などがありますが、CFDなら経験の浅い個人投資家でも、少額から気軽に投資しやすいのが特徴です。
また原油といえばWTI原油が定番ですが、このほか原油関連にはどのような銘柄があるのかご存知でしょうか。
原油を取引できるCFD業者を比較しつつ、原油取引で押さえておきたいポイントを詳しくご紹介します。
原油価格は需要と供給の影響が大きい
油田から採掘されて精製されていない状態の原油は、黒くて粘り気があるのが特徴です。
この原油を精製した各石油製品(ガソリン、軽油、灯油など)は、車や暖房製品の燃料として欠かせません。
日常生活にも身近な石油ですが、その元となる原油の価格変動要因には以下が挙げられます。
- 市場の需要と供給のバランス
- 需給以外の地政学リスクなど(産油国の政治動向や国際情勢など)
需要、供給、地政学リスクにはどのような要因があるのか、それぞれ項目ごとに見ていきましょう。
需要の要因
- 世界的な景気拡大による原油の需要の高まり
- 季節性による需要の変化(寒波や好天候による消費量の増加)
インドや東南アジアなどの経済成長を続ける国々で原油の需要が高まると、原油価格を押し上げる要因となります。
そして中国は世界第二位の原油消費国であり、中国の景況感と原油の消費量には大きな関わりがあります。
日常的な観点でいえば、アメリカやヨーロッパで寒波が到来すれば、暖房用として灯油の重要が高まります。
また世界最大の産油国でありつつ、世界最大の消費国でもあるアメリカは、ご存知のとおり日常生活に車が欠かせない車社会です。
とくにドライブシーズンの夏に関しては、長期休暇で長距離移動する人々も多く、好天候は原油の需要が高くなる要因となります。
日本の台風と同様に、アメリカの夏季はハリケーンの季節です。
もしハリケーンによって油田地帯のパイブライン(石油を輸送するパイプのこと)がダメージを受けてしまうと、原油価格の上昇に繋がります。
供給の要因
- OPECによる協調減産、追加増産
- 油田施設やタンカーの事故など
- 新しい油田の発見、採掘技術の進歩、可採埋蔵量の増加
欧米の国際石油資本に対抗するために、OPEC(石油輸出機構)は中東の産油国が利益を守るために設立されました。
2021年秋、コロナ禍で世界の景気が回復していく経過において、原油の需要増大に対し、OPECは原油の増産に消極的だったこともあり、需給バランスが変化しました。
これにより、ガソリン価格が高騰し、アメリカ主導で日本政府も石油備蓄の放出を決定したことが記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
近年はアメリカによるシュールオイルの開発が進んでいることで、OPECの影響力は低下傾向にあるといえます。
とはいえ増産・減産による供給量の変化が、原油価格の大きな影響要因であることに変わりはありません。
またロシアは世界最大の原油埋蔵量を誇るため、供給の変化を見ていく上で外せない国といえます。
需給以外の要因
- 中東など産油国でのテロや紛争、戦争
- ヘッジファンドなど投機筋による投機マネーの流入
中東で紛争や戦争が起これば、原油の供給量が減る可能性が高くなり、それにより早めに確保しようと動きも出てきますから、価格上昇の要因ともなります。
そして需給以外の要因として、原油はヘッジファンドなど大口投機筋の取引対象ともなるため、そのポジション動向に注目してみてもいいでしょう。
CFTC(米商品先物取引委員会)が公表する原油の投機筋のポジション動向は、以下のサイトでチェックすることができます。
https://jp.investing.com/economic-calendar/cftc-crude-oil-speculative-positions-1653
石油生産国&石油消費国ランキング
石油は産出量が多い国と、消費量が多い国の動向が値動きに影響を与えやすくなっています。
それぞれの2023年のデータをご覧ください。
順位 | 国名 | 2023年 原油(石油)生産量 | シェア |
---|---|---|---|
1位 | アメリカ | 827,141 | 18.35% |
2位 | ロシア | 541,660 | 12.01% |
3位 | サウジアラビア | 531,678 | 11.79% |
4位 | カナダ | 277,851 | 6.16% |
5位 | イラン | 214,298 | 4.75% |
6位 | イラク | 213,041 | 4.73% |
7位 | 中国 | 209,026 | 4.64% |
8位 | ブラジル | 183,693 | 4.07% |
9位 | アラブ首長国連(UAE) | 176,067 | 3.91% |
10位 | クウェート | 139,767 | 3.10% |
順位 | 国名 | 2023年 石油消費量 | シェア |
---|---|---|---|
1位 | アメリカ | 815,610 | 18.00% |
2位 | 中国 | 768,552 | 16.96% |
3位 | インド | 249,254 | 5.50% |
4位 | サウジアラビア | 172,435 | 3.81% |
5位 | ロシア | 165,308 | 3.65% |
6位 | 日本 | 151,449 | 3.34% |
7位 | 韓国 | 121,392 | 2.68% |
8位 | ブラジル | 118,368 | 2.61% |
9位 | カナダ | 99,838 | 2.20% |
10位 | ドイツ | 91,564 | 2.02% |
こうしてみると、原油生産国としてはアメリカ、ロシア、サウジアラビアの順に、石油消費国としてはアメリカ、中国の影響が大きいことが分かりますね。
3つの原油価格
原油といってもいろいろな種類がありますが、投資の世界でベンチマーク(=基準)となる原油価格には、3つの種類があります。
原油の主要な消費地域であるそれぞれの三大市場で、北米はWTI原油、欧米は北海ブレント原油、アジアは東京原油がベンチマークとなっています。
名称 | 取引所 |
---|---|
NY原油 (WTI原油) | NYMEX (アメリカ・ニューヨーク) |
ブレント原油 (北海原油、北海ブレント) | ICEフューチャーズ・ヨーロッパ (イギリス・ロンドン) |
東京原油 (プラッツドバイ原油、中東産原油) | 東京商品取引所 (日本・東京) |
WTI原油
CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)グループのニューヨークの商品先物取引所、NYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所))で取引されている「WTI原油」が、原油のベンチマークとして世界的にスタンダードです。
よくニュースで「ニューヨーク原油先物」「NY原油先物」の価格が流れることもありますが、これもWTI原油のことを指しています。
WTIとはウエスト・テキサス・インターミディエート(West Texas Intermediate)の略です。
米国西テキサス州で採掘される原油で、硫黄分が少なく軽質の原油として知られています。
ブレント原油
ブレント原油は、イギリスからノルウェーにかけた位置にあるイギリス領の北海油田(ブレント油田など)で採掘され、ICEフューチャーズ・ヨーロッパ(旧ロンドン国際石油取引所)で取引されている原油です。
北海原油、北海ブレントとも呼ばれています。
ヨーロッパでベンチマークとなっているブレント原油は、WTI原油にも似た硫黄分が少ない軽質の原油で、石油(ガソリンや軽油など)に精製しやすい、海上輸送しやすいメリットもあり人気があります。
東京原油
アジアでベンチマークとなっているのが、東京原油です。
東京商品取引所(TOCOM)で取引されているため東京原油と呼ばれていますが、実際に取引の指標となっているのは中東産のドバイ原油(ブラッツドバイ原油)です。
市場での取引量はWTI原油、ブレント原油に比べると劣ることから、これら2つの銘柄に比べると、マーケットでの注目度はそれほど高くないといえます。
ここまでが、世界でベンチマークとなる3つの原油価格の解説となります。
とくに先物市場において、WTI原油とブレント原油は、取引量の多さと価格の透明性の高さにより、注目度も高いです。
なおニューヨーク市場のWTI原油は、アメリカにおける原油の生産量・消費量や在庫など、自国の影響を受けやすい傾向があります。
ロンドン市場のブレント原油は、ヨーロッパに近い中東やアフリカ情勢の影響を受けやすい傾向がある、ということも覚えておくと便利です。
原油(石油)関連の個別株
このほかCFDでは、原油価格の変化によって欠かせない個別株もあります。
それはNYダウ構成銘柄でもある、アメリカの石油メジャー「エクソンモービル」と「シェブロン」です。
このほかイギリスの石油メジャーのBP(ブリティッシュ・ペトロリアム)、英蘭のロイヤル・ダッチ・シェル、フランスのトタル、中国の中国石油天然気(ペトロチャイナ)あたりの知名度も高いです。
原油の取引を考えるとき、米国株などの石油メジャー関連銘柄にも注目してみるのもいいでしょう。
原油CFDと原油先物の違い
原油取引には「原油CFD」「原油ETF」「原油先物」などがあります。
このうち先物は株価指数の取引がほとんどのため、個人投資家の利用が多いのが原油CFDです。
それぞれ、どのような違いがあるのか見ていきましょう。
原油CFD | 原油ETF | 原油先物 | |
---|---|---|---|
取引時間 | 月~金曜日 10:00~翌7:00 (米国夏:9:00~翌6:00)*1 | 平日 9:00〜15:00 | 8:45〜15:15、 16:30〜翌5:30 |
平日祝日時の取引 | 可能 | 不可 | 可能 |
限月 (決済期限) | なし (ロールオーバー) | なし (ロールオーバー) | あり |
売買 | 売りも可能 | 買いのみ | 売りも可能 |
最大レバレッジ | 20倍 | 1倍 | 約12倍 *3 |
取引手数料 | 無料 | 0〜55円 | 6.6ドル *4 |
最低投資額/ 最低必要証拠金 | 1枚/約4,400円 *2 | 1口/約1,000円 | 1枚/約104万円 *3 |
*1 GMOクリック証券の原油CFDの取引時間。
*2 2023年9月7日のGMOクリック証券の必要証拠金。
*3 2023年9月7日のレートで算出(原油先物のレバレッジ=WTI原油価格×1,000(倍率)÷証拠金で算出、原油先物の最低必要証拠金=CMEが公表するイニシャル証拠金×米ドル/円で算出)。
*4 楽天証券の原油先物の場合。
ETF(上場投資信託)では株式のように売買を行うことができますが、取引時間は原油ETF銘柄が上場している東証(東京証券取引所)の立会時間に限定されるのがデメリットです。
とはいえ、もしも長期で原油取引をするなら、ETFを検討してみるのもひとつの手です。
CFDは取引手数料が無料であり、取引単位が小さく設定されているため、少額から取引を始めやすいメリットを備えています。
原油先物は取引単位が大きいので、少額で始めるには適していません。
一方でCFDではレバレッジの自由度が高いため、短期で原油の積極的な値動きを狙う取引にも適しています。
FXと原油の関係
原油の値動きは、為替の変動要因としても注目されています。
とくに相関性が高い通貨が「カナダドル」です。
先に挙げた表で確認できますが、原油(石油)生産量が多いカナダは天然資源が豊富であり、原油をはじめとした鉱物資源の輸出割合が高くなっています。
アメリカでも多くの原油は生産されていますが、カナダは輸出の割合が多いことが相関性が高い理由です。
つまり原油高となれば、カナダは輸出で黒字が増えることとなり、結果としてカナダドル高になりやすい傾向があります。
まとめると、『原油高=カナダドル高』『原油安=カナダドル安』と、原油とカナダドルは正相関の関係性にあるのです。
実際に「WTI原油」「カナダドル/米ドル」のチャートを見比べると、相関性を確認できます。
原油の値動きをFXに生かしたいとお考えでしたら、カナダドル/米ドルのチャートもチェックして見てください。
原油の最適な取引時間
原油はそれぞれの銘柄ごとに、原油取引所で取引されています。
銘柄/ 取引所 | 現地取引時間 | 日本時間(夏) | 日本時間(冬) |
---|---|---|---|
WTI原油 NYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所) | 9:00~14:30 (日~金、NY時間) | 22:00~3:30 | 23:00~4:30 |
ブレント原油 ICEフューチャーズ・ヨーロッパ(ロンドン) | 1:00〜23:00 (日~金、ロンドン時間) ※日曜日は23:00から取引開始 | 10:00~8:00 | 9:00~7:00 |
東京原油 東京商品取引所 | 8:45~15:10、16:30~5:55 |
取引が活発になる傾向がある時間帯は、市場オープン時と、クローズ前の30分くらいの間です。
日本時間でいうと、17:00~18:00、21:00〜から深夜にかけて、3:00〜5:00あたり
FXが動く時間帯と同じように、午前中は変動率が小さい傾向があるため、ロンドン時間・NY時間の値動きに注目していきましょう。
WTI原油 リアルタイムチャート
カナダドル/米ドル リアルタイムチャート
毎週、週間原油在庫をチェックしよう
週間石油在庫は経済指標のひとつです。
経済指標というと、FX取引をしている方にはお馴染みかもしれませんね。
米国エネルギー情報局(EIA, US Energy Information Administration)が毎週水曜日に発表しています。
発表内容ではアメリカ全体の石油在庫状況のほか、地区別や原油、石油種別(ガソリン、軽油、灯油など)ごとに確認することができます。
- 米国夏時間:毎週水曜日PM23:30
- 米国冬時間:毎週水曜日AM0:30
祝日などの都合で発表日が水曜日から翌営業日になるときは、翌営業日の発表時間が30分遅れるため、事前に経済カレンダーで確認するようにしてください。
とくに、WTI原油の受け渡し拠点となるオクラホマ州クッシング地区の原油在庫の注目度が高いです。
原油関連の経済指標はほとんどありませんが、週間石油在庫では世界最大の原油消費国であるアメリカの原油動向を判断できます。
在庫増加は需要低迷を示すため原油の売り材料となり、在庫減少は需要の増加を示すため原油の買い材料と判断されています。
原油取引のポイント
原油の価格変動要因は、以下にありますJCFIA(日本商品先物振興協会)の画像も参考にしてみてください。
原油は米ドル/円と比べると約5倍、NYダウと比べると約2.5倍と、大きな価格変動を見せる銘柄です。
もちろん変動リスクはありますが、値動きの見極めさえできれば、大きな利益に期待できるでしょう。
原油取引「8つ」のポイント【まとめ】
- 値動きが激しい分、大きな収益のチャンスがある
- ファンダメンタルズ要因は、主な産油国であるアメリカ、サウジアラビアなどの中東、ロシア、中国の動向
- 世界の景気と原油価格は「正相関」が高い
- FXではカナダドルと正相関の関係にある
- 個別株ならエクソンモービル、シェブロンに注目
- CFDで原油取引なら、先物より少額で取引できて、ETFよりも自由度が高い
- 原油の値動きはFXと同じく、日中より夜(NY時間)の方が大きい
- アメリカの原油需給は経済指標の「週間原油在庫」でチェック
原油を取引できるCFD業者を比較
現在、原油は多くの業者で取引を行うことができます。
CFD業者 | 原油 銘柄数 | スプレッド (WTI原油) | 最小取引単位/ 最小取引額の目安 (WTI原油) | 銘柄詳細 |
---|---|---|---|---|
IG証券 CFD | 6銘柄 | 2.8pips | 0.1Lot/ 約3,400円 | WTI原油、北海原油、NYヒーティングオイル(灯油)、NY天然ガス、NY無鉛ガソリン、ロンドン軽油 |
GMOクリック証券CFD | 2銘柄 | 2.6pips | 1Lot/ 約4,850円 | WTI原油、北海原油 |
DMM CFD | 1銘柄 | 3.9pips | 1Lot/ 約4,850円 | WTI原油 |
楽天CFD/楽天MT4 CFD | 1銘柄 | 2.9pips | 1Lot/ 約4,850円 | WTI原油 |
外貨ex CFD | 1銘柄 | 2.6pips | 1Lot/ 約4,850円 | WTI原油 |
トライオートETF | 1銘柄 | 4.8pips | 10Lot/ 約19,500円 | 原油ETF(WTI原油) |
くりっく株365 | 1銘柄 | 変動制 | 1Lot/ 約14,600円 | WTI原油 |
ループ株365 | 1銘柄 | 変動制 | 1Lot/ 約14,600円 | WTI原油 |
※スプレッド、必要証拠金取得日・記載日:2024年9月12日
データは各社の取引ツールから取得しています。くりっく株365は株価指数証拠金基準額から取得しています。
株価指数や金、個別株など他銘柄の必要証拠金は、こちらの記事でまとめています。
合わせてご参考にしてみてください。
原油CFDおすすめ業者① IG証券
原油をCFDで取引するなら、IG証券のCFD口座がおすすめです。
原油CFDが取引できる商品CFD(エネルギー、貴金属、農作物)では、取引手数料が無料であり、スプレッドが狭く、少額から取引を行うことができます。
WTI原油、北海原油のほかにNYヒーティングオイル(灯油)、NY天然ガス、NY無鉛ガソリン、ロンドン軽油と原油銘柄を豊富に取り揃えています。
さらに個別株も豊富ですから、エクソンモービルやシェブロンなどの米国株式にも投資できるのが魅力です。
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お申し込みは最短3分、お手続きはスピーディーに完了します。
原油CFDおすすめ業者② GMOクリック証券
IG証券ほどの銘柄数には及びませんが、GMOクリック証券のCFDではWTI原油と北海原油の2銘柄を取引でき、取引手数料も完全無料です。
GMOクリック証券の魅力は、操作性に優れたスマートフォンアプリです。
『IG証券ほどの銘柄は必要ないけど、扱いやすい取引ツールで気軽に売買したい』とお考えでしたら、GMOクリック証券をチョイスしてみてください。
\ こちらから無料で「GMOクリック証券」の口座開設ができます! /
お申し込みは最短5分、口座維持費等の費用は一切かかりません。
原油はノックアウトオプションで取引も可能
IG証券ならCFDのほかに、ノックアウトオプションやバイナリーオプションで原油を取引することも可能です。
ノックアウトオプションで取引できるWTI原油のスプレッドは、CFDと共通の2.8pipsです。
さらにノックアウトオプションなら、オプション料のみと損失リスクを限定させつつ、原油ならではの大きな利益を追求できる特徴も備えています。
原油を取引してみたいけど、CFDはなんだか不安と感じているのでしたら、ノックアウトオプションも検討してみてはいかがでしょうか。
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